第53回(2022年度)日本看護学会学術集会 札幌

Presentation information

ポスター

ポスター3群:在宅療養移行支援

Thu. Sep 1, 2022 2:00 PM - 3:00 PM ポスター会場 (206)

座長:矢口 亜希子

[ポスターS-3-3] QOLを重視した最期を迎えるための在宅医療連携の在り方

-抗がん剤治療継続困難と感じた一事例を通して-

渡邉 清江1, 柴崎 美登子1, 森田 友香里2 (1.訪問看護ステーション壬生, 2.丸太町病院)

Keywords:在宅医療連携、多職種、がん患者

【目的】抗がん剤治療は通院で行うことが主流となっており、多職種が介入されることが多い。その際、各々の専門領域により患者に提供できる情報は異なり、患者に関わる各専門職の思いは様々である。そこで、がん患者がその人らしく最期を迎えられるよう、多職種と連携していった事例を通し、各専門職と共に振り返ることにより、現在の在宅医療連携の弱点や連携を促進させる要因を明らかにする。【方法】A事例に関わった訪問看護師2名、外来看護師4名、病棟看護師1名、相談員1名、担当医師1名、薬剤師1名でフォーカス・グループ・ディスカッションを行った。データ分析は、研究参加者ごとに逐語録を作成し、文意を損なわないようにコード化し、それぞれのコードの共通性を見いだす中で抽象度を上げてコード化を図りサブカテゴリーを導き出した。導き出したサブカテゴリーの内容について、さらに共通性や相違性を見いだし、カテゴリーを抽出した。なお本研究は当会の倫理審査委員会の承認を得た上で行った。【結果】23個のサブカテゴリーと7個のカテゴリーが抽出された。弱点としては、「情報発信の不確かさ」「医療提供者のジレンマと苦悩」「時間の確保や調整が困難」「システムに関する理解の差」の4つのカテゴリーが、促進させる要因としては、「患者理解への前向きな姿勢」「各職種への信頼」「支援が成功したことによる自信」の3つのカテゴリーが抽出された。【考察】がん患者がその人らしい最期を迎えられるよう支援するために、既存の在宅医療連携の方法では不十分なことがわかった。情報共有のための時間の確保や調整が困難であることから、現状の連携方法に加え、他の手段を模索する必要があると考える。また、各職種に不足しているお互いの領域の知識の習得や、多職種の抱えるジレンマや苦悩の共有を図ることは、連帯感にも繋がると思われる。そして、どの職種も患者の価値観を捉えるために前向きに働きかけており、それぞれが捉えた患者の一面を情報共有することで、多職種間の信頼と連携を促進させる要因となっている。その支援が成功につながったという実感が在宅医療連携への自信となり、今後のがん患者の支援のために必要と考えている具体策が提案され、チームとして協働して改善されていくことが示唆された。