第53回(2022年度)日本看護学会学術集会 札幌

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口演

口演1群 健やかに生まれ・育つことへの支援

Thu. Sep 1, 2022 2:00 PM - 3:00 PM 口演会場1 (小ホール)

座長:佐藤 君江

[口演S-1-1] 経腟分娩 2 時間後の初回歩行の可否と利点に関する調査

田中 尚子, 廣岡 達美, 北村 文音, 秦 里花, 米川 はな子, 青木 かおり (上尾中央総合病院)

Keywords:経腟分娩、初回歩行、転倒、貧血症状、気分不快

【目的】経膣分娩 2 時間後の歩行の可否とその利点について明らかにする。【方法】対象は 2020年 10 月~ 2021年7 月に A 病院で経膣分娩し、本研究の同意が得られた褥婦。そのうち、独自の基準に該当した褥婦を歩行対象とした。分娩 2 時間後と 6 時間後の歩行群に分け、バイタルサインや貧血症状などについてデータ収集を行った。また、対象褥婦と病棟スタッフに自記式質問紙調査を実施した。【結果】分娩 2 時間後の歩行群では 104 人中 47 人が歩行対象となり、歩行できた人が 41 人(87.2%)であった。分娩 6 時間後の歩行群では 107 人中57 人が歩行対象で、全員が歩行できた。独自のフローチャートに沿って、転倒予防を十分に行い歩行を実施することで、すべての歩行対象者において転倒した褥婦はいなかった。歩行の可否に影響する因子の分析では、分娩第 4 期の血圧、脈拍、出血量において有意差がみられた。自記式質問紙調査では、分娩 2 時間後に歩行した褥婦については、全員が次回分娩時も同時間(分娩 2 時間後)での歩行を希望した。褥婦からは「自由に動けて気が楽だった」「家族にすぐ連絡できるのはいいと思った」などの声があった。スタッフからは「訪室回数が減り褥婦の休息時間が増え、ナースコール対応や下膳などの手間が省けたため業務改善につながった」などの意見があった。分娩 6 時間後に歩行した褥婦では、6 人(10.2%)が「次回のお産の際は分娩 2 時間後に歩行したい」と回答した。【考察】分娩 2 時間後で対象者の 87%以上が歩行できており、分娩経過に大きな異常のない褥婦の多くは分娩 2 時間後の歩行が可能であったといえる。また、第 4 期のバイタルサイン、出血量は褥婦の全身状態や循環動態が反映されていると考えられ、歩行の可否にも影響を及ぼしていると推察される。先行研究においても、分娩後は循環動態に変動をきたしやすくふらつく等の転倒リスクがあるとされており、バイタルサインの変化に注目することは重要である。個々の褥婦の状態をアセスメントし転倒予防に努めたうえで歩行を行えば、分娩 2 時間後でも十分に歩行が可能であると考える。分娩 6 時間後に歩行した褥婦の一部からは早期の初回歩行を希望する声もあり、褥婦・スタッフともに分娩 2 時間後の歩行に対する肯定的な意見が得られた。分娩 2 時間後の初回歩行は褥婦のニーズを満たし、かつスタッフの業務改善にもつながるといえる。