第54回(2023年度)日本看護学会学術集会 横浜

講演情報

教育講演

教育講演2 ケアの意味を見つめる事例研究

2023年11月8日(水) 10:30 〜 11:30 第1会場 (G7+G8)

座長:渡邊 典子

講師:野口 麻衣子

[IS2-1] ケアの意味を見つめる事例研究

野口 麻衣子 (東京医科歯科大学在宅・緩和ケア看護学教授(キャリアアップ))

【抄録】
 本学会のテーマ「看護職の働き方を変え、新たな看護の価値を創造しよう」と事例研究は、大変距離の近いところにあると言えると思います。なぜなら、今回私がご紹介する「ケアの意味を見つめる事例研究」は、まさに「新たな看護の価値の創造」をしていく研究方法だからです。
 看護師によるケア実践については、多くの研究が行われています。看護領域の研究においても、研究のエビデンスレベルの高いランダム化比較試験や、複数のランダム化比較試験を集めたメタ分析等の論文も出版されています。このようなエビデンスレベルの高い研究は、極めて貴重な知見を示しますが、看護の価値の創造にはなかなか結び付きにくいと考えられます。もちろん、効果が立証されたケアは、実施が推奨され、患者・家族に良いインパクトを与えるため、非常に有用であることは疑いようのない事実です。しかし、看護実践は、看護ケア実践者と患者の個々の関係や諸要素が深く関与します。そのため、患者・家族への関わりの中で、その「時々の状況に応じた適切な判断を基にした繊細かつ丁寧な看護実践」の積み重ねの上に、ケアが行われる。その「時々の状況に応じた看護実践」の積み重ねこそが、看護の技術であり、また、看護の価値が潜んでいるものと考えます。ケアに携わる看護職の多くの方は、一事例の中で「適切な判断を基にした繊細かつ丁寧なケア実践の積み重ね」をどのように行ったらよいのか悩み続けていると推測します。
 そこで、私たちは、優れたケア実践を言語化し、蓄積することを目指し、看護実践の意味に焦点を当てた事例研究「ケアの意味を見つめる事例研究」の開発に取り組んできました。本事例研究の特徴としては、対象がケア実践であり、ケア実践をメタファー化(大見出し・小見出し)することです。複数人のグループで語り合い、問われて語る(問われ語り)ことで、新たな意味に気づき、実践を語るための、メタファー(大見出し・小見出し)が形成されます。その中に、今まで言語化されていなかった看護の価値が見いだされていくのです。
 本講演では、ケアの意味を見つめる事例研究の方法論や実施方法、また、現場での活用方法についても紹介させていただく予定にしています。