第54回(2023年度)日本看護学会学術集会 横浜

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基調講演

基調講演 看護職の働き方を変え、新たな看護の価値を創造しよう

Wed. Nov 8, 2023 9:00 AM - 10:00 AM 第1会場 (G7+G8)

座長:長野 広敬

講師:高橋 弘枝

[KY1-1] 看護職の働き方を変え、新たな看護の価値を創造しよう

高橋 弘枝 (日本看護協会会長)

【抄録】
 近年、看護職の働き方改革が求められているが、なぜ働き方を変える必要があるのだろうか。超少子高齢多死社会において、労働力人口が減少する中でも看護へのニーズは確実に増大する。将来にわたって看護の提供体制を維持するためには、量と質の両面での看護職確保が必要であり、人員が限られた中で働き方をより効率的なものとすることが求められている。看護職の人材確保のためには、地域偏在、領域偏在の是正や、多様で柔軟な働き方の普及も有用と考える。
 看護職の働き方を変えるには、ICT、AI、DX などテクノロジーの活用による業務効率化を推進する他、他職種や他業種、産業界との連携も重要である。業務の効率化にあたっては、看護職が果たす役割に照らして、看護業務を根本から見直すことも必要になるだろう。
 看護業務の効率化の目的は、看護職としての本来の役割を発揮し、看護の質を向上すること、さらに、看護の新たな価値の創造につなげることである。効率的な働き方を推進することによって生まれた時間を、それまで十分行うことができなかった看護実践や、看護実践の質を高めるための研修や学びなおしなどに充てることで、サービスの質の向上をはかることができるようになる。
 看護が目指すことは、看護の専門性を発揮し人々に貢献することであり、看護の力で健康で幸せな社会をつくることである。看護の使命は、あらゆる場で人々の健康を支え、あらゆる世代のいのちと暮らしを守ることである。看護職には、医療と生活のコーディネーターとして、多職種チームにおけるリーダーシップやマネジメントの役割が期待される。新たな働き方によって、看護職が貢献できる機会を拡大し、社会貢献につながることも期待される。
 看護職がやりがいをもって働き続けられるためには処遇改善も不可欠である。看護職がスキルアップし、キャリアや貢献に応じた正当な評価を得られるような体制整備、環境整備も重要である。看護職の処遇改善のためには看護の役割、重要性、価値、専門性について国民の理解を得ることが必須であり、看護の役割や貢献を可視化しわかりやすく示してゆくことも求められる。
 本講演では、働き方を変えることが求められる社会的背景や、国民のニーズに対応し適切な支援を行うために看護職一人ひとりに求められる役割、今後の看護のあり方について展望する。