第54回(2023年度)日本看護学会学術集会 横浜

講演情報

口演

口演10群 災害看護

2023年11月8日(水) 13:15 〜 14:15 第8会場 (G314+G315)

座長:村田 美和

[口演Y-10-3] 産科混合病棟における災害対策上の課題の構造化

―フォーカスグループインタビュー法を用いた検討―

森 舞香, 島影 知子, 岩崎 絵里香, 國村 右来子, 間嶋 一世, 藤本 かおり, 篠原 梓, 本田 茉耶 (高松市立みんなの病院)

キーワード:産科混合病棟、災害対策、南海トラフ地震、フォーカスグループインタビュー法

【目的】南海トラフ地震は今後30年以内に70~80%の確率で発生すると言われている。A病院は災害拠点病院であり、B病棟は産婦人科と他科の混合病棟として地域の周産期医療を担っている。災害時、産科混合病棟では分娩の進行状況や他科の患者の重症度など様々な場面が想定されると共に、妊産褥婦・新生児および他科の患者という対象者の状況の違いにより避難方法が多様である。また、看護師と助産師が専門性を発揮しながら分業することで協働しているため、それぞれの立場で災害対策に対する視点や問題があり、課題は複雑化している。課題を解決するためには災害対策上、産科混合病棟を取り巻く背景を構造化し、検討する必要があると考えた。そこで今回、産科混合病棟に勤務する看護職員を対象に看護師と助産師が協働して行う災害対策上の課題を構造化するためフォーカスグループインタビュー法による研究に取り組んだ。【方法】調査協力者はA病院B病棟に勤務する看護師と助産師各3名とし、経験年数2年以上のリーダー役割を担うことができる者を、部署責任者の推進を受け、本人の同意を得た。産科混合病棟の災害対策上の課題の背景や要因を構造化するため、グループ・ダイナミクスによって自発的な発言が推進され、潜在的な意見を引き出す特徴を持つとされるフォーカスグループインタビュー法を採用し、得られたデータをもとに質的記述に分析した。【結果】産科混合病棟では、普段から看護師と助産師が「専門性の役割の違いによる役割分担」によりそれぞれの業務を遂行している。そのため、災害発生時の分娩進行や夜間などの人手が少ない時間帯における「災害発生時の状況に応じた対応の困難さ」を強く感じていた。その背景には、「災害準備や災害意識の不足」、「新生児・妊産褥婦のトリアージ知識や防災時対応の体系化不足」があり、「患者への災害に対する意識づけや災害に関する情報提供不足」は、患者の混乱を招く恐れがあることが示唆された。【考察】災害時、分娩進行状況や夜間帯などの様々な場面を想定し、具体的な行動指針を含めた独自のマニュアル作成と実動訓練が必要である。災害対策は組織全体の課題であると認識し、それぞれが当事者となり協働して取り組む体制づくりが必要である。看護職者だけではなく、患者への災害時の行動や知識に関する啓発活動を実施し、災害の備えに対する意識づけを行う必要がある。