[口演Y-13-1] 新設されたHCUでのくも膜下出血患者の看護
―チームで乗り越えた脳血管攣縮期の軌跡―
Keywords:HCU、くも膜下出血、脳血管攣縮期、看護
【目的】A病院高度治療室(High Care Unit以後HCUとする)は昨年4月に新設され、4対1の看護配置により重症患者の看護を継続的に提供できるようになった。平均滞在期間は1.9日であるが、くも膜下出血後の患者は脳血管攣縮期(スパズム)管理のため長期滞在することが多い。回復に向けて、多職種との連携や入院生活の援助をスタッフ間で共有し、統一した看護実践を行ったので報告する。【方法】A病院においてWFNSグレード3、Fisher分類グレード3のくも膜下出血と診断され、HCUにおいてスパズム管理を受けた80歳代の患者。その一事例において電子カルテより入室から退室までに提供した看護ケアや多職種との連携、患者の言動の変化について情報を整理し、病棟内で振り返りを行った。【結果】くも膜下出血後HCUに入室した患者は、スパズム管理のため頻回な意識レベルの観察、頭痛に対する疼痛管理が必要であった。また、HCUという特殊な環境下に対する戸惑いや不安、安静指示による活動量低下から不眠が生じ、昼夜逆転傾向にあった。患者からも「こんなんじゃなかったのに、今日は眠りたい。」と落ち込みが見られたため、覚醒を促すため日中の過ごし方を本人と共に考え、家族と電話する機会を設けた。「孫が就職するまでは見届けて元気になったら家族と旅行やご飯に行きたい。」と退院への意欲が現れた。HCU入室中は体調に合わせADLを維持するといった目標を患者と一緒に確認し、薬剤師、医師と眠剤の変更や鎮痛薬の調整をした。患者から「よく眠れた。昼間も頑張って起きる」と発言があった。生活リズムが整いADLが拡大、離床が進み、食事量が増加した。日々できていることを認める声かけをした。経過は順調であり、HCU入室13日目に一般病棟へ退室した。【考察】竹山は「安静の中でも患者ができることを提案したり、できるようになったことを一緒に考えていくことで、回復するための努力を促進し、回復の感覚をつかむことが可能となる。」と述べている。患者はスパズム期における安静指示や、HCUという特殊な環境下により身体的・精神的苦痛を感じている中で、看護師の関わりにより退院するという目標をもてた。目標達成に向けて多職種連携や看護介入の工夫を行い、できていることを認めることが、長期的なスパズム期を乗り越えるために大切であったと考える。