[口演Y-13-3] 特定行為「インスリンの投与量の調整」実践の1年間の活動と成果
Keywords:特定行為、インスリンの投与量の調整、多職種連携
【目的】特定行為「インスリンの投与量の調整」実践の1年間の活動と成果を振り返り、今後の課題を明らかにする。【方法】対象者は特定行為「インスリン投与量の調整」を実践した糖尿病患者で、調査期間は2021年4月~2022年3月末とした。分析方法は、特定行為実践時の診療録、看護記録、支援内容、検査値を元に、日本看護協会が挙げている特定行為研修修了者に期待される成果(重症化予防、予定外受診の減少・在宅療養の継続、生活習慣の改善、外来待ち時間の短縮、患者家族への分かりやすい治療・検査説明、多職種への支援)の視点で検証し、考察する。倫理的配慮は、A病院倫理審査委員会の承認を得た。実践報告の趣旨、診療情報の二次利用と実践結果の公表について患者に口頭で説明し同意を得た。【結果】特定行為を実践した糖尿病患者は女性4名で、病型は1型3名、2型1名である。また、インスリン療法は頻回注射3名、インスリンポンプ使用者は1名である。介入前後でHbA1c値は平均10.7%から8.15%に低下した。さらに、低血糖発生率は介入前後で平均4.86%から1.75%に低下し、重症化予防ができた。糖尿病の悪化による予定外受診はなく、在宅療養を継続していた。生活習慣の改善では、2型糖尿病患者は食生活の改善と運動療法でBMI28.2から21.9に低下、脂質異常が改善し肥満が解消された。また、医師の診察前に特定行為をすることで診療が効率化され、結果的に患者の待ち時間が平均20分短縮した。患者家族への説明場面では、患者家族より「具体的に分かった」等の肯定的な意見があった。多職種カンファレンスでは、患者の病態、治療方針、支援方法について意見交換、問題提起の場を持ち、多職種連携の調整役となることができた。【考察】患者のHbA1c値が改善し、低血糖発生率が削減したのは、特定行為を行う看護師が療養生活の詳細を聴取し、血糖変動との関連を分析してインスリン投与量の調整をリアルタイムにできたことが1つの要因として考えられた。また、多職種連携による相乗効果が得られ、理想的な療養生活に導けた結果、生活習慣が改善され、重症化予防、予定外受診の減少、在宅療養の継続に繋がったと考える。看護師による特定行為は、病態の変化等を的確に判断でき、看護の関わりの中で質の高い医療を効率的に提供可能になる。また、医師の限られた診療時間が補完できるなどの様々な成果が得られた。