第54回(2023年度)日本看護学会学術集会 横浜

Presentation information

口演

口演13群 看護職間・他職種との協働③

Wed. Nov 8, 2023 10:30 AM - 11:30 AM 第9会場 (G316+G317)

座長:池袋 昌子

[口演Y-13-6] 看護師の裁量を活かした包括的指示の作成

杉田 扶希子, 吉田 美香, 渡邉 香織 (明石医療センター)

Keywords:包括的指示、看護師の裁量権、特定行為研修修了看護師の活用

【目的】医師の働き改革を契機に、あらゆる医療職種のタスク・シフト/シェアが推進されている。地域医療圏域の中核を担うA病院では、看護部が他職種の業務を多く担ってきたことに加え、数年来の新型コロナ感染症対応により離職が増えた。タスク・シフトを進めることが急務であり、各職種が法令で示されている業務の実施と協働に取り組んでいる。2022年6月発行の「看護の専門性の発揮に資するタスク・シフト/シェアに関するガイドライン」を活用し、看護職もその専門性を発揮し本来すべき業務に専念でき、看護師が裁量を活用できることを目的として、看護職員全員が実施できる包括的指示を作成した。【方法】作成する指示は、指示の選択肢が多く、療養上の世話の範囲にある「便秘時指示」に決定した。臨床推論の思考過程を学んだ特定行為研修修了看護師で協議し、包括的指示を作成した。作成過程では、安全を担保できるよう特定行為研修指導医師の監修を受けた。包括的指示の活用については、法令をふまえた医師の指示のあり方、看護師が判断すべき療養上の世話をふまえて、作成経緯を看護部全体で説明した。看護師の判断力が重要となるため、指示の実施過程についての研修を実施し、実施する看護職員に実施過程の理解度を確認して運用を始めた。便秘時の包括的指示の活用により、患者の排泄コントロール状況の改善に効果があったかを調査する。【結果】指示にある行為の侵襲度と患者状態の判断において、難易度の低い苦痛緩和における疼痛や便秘など程度に応じた指示の包括度を検討し、患者を特定した包括的指示を作成した。入院時指示には、患者の状態と指示内容がそぐわない実態があり、指示の実施過程で看護師のジレンマが生じていた。指示の実施に至るまでの患者の状態を判断するための看護記録、情報共有が増加した。【考察】看護師が診療の補助を行う際には、医師の「指示」が必要であると規定があるが、その「指示のあり方」の規定はない。包括的指示は、医師の指示が成立する条件をふまえ、看護師が患者の状態に応じて柔軟に対応できるよう、医師が患者の状態変化を予測し、その範囲内で看護師が実施すべき行為である。患者の状態を一番近くで捉えている看護師であるからこそ、包括的指示により、タイムリーに患者の状態変化に対応できる。その実施において看護師自身の裁量を活かすことは、看護のやりがいにつながる。