第54回(2023年度)日本看護学会学術集会 横浜

講演情報

口演

口演14群 高齢者、認知症の人の看護①

2023年11月8日(水) 13:15 〜 14:15 第9会場 (G316+G317)

座長:長瀬 佐知子

[口演Y-14-4] 前立腺生検を迷う高齢透析患者の意思決定支援に関わって

―NSSDMを用いた分析から―

梅田 望美, 大沢 緑, 加藤 美由紀 (秋田病院)

キーワード:高齢透析患者、がん患者、意思決定支援、プロセスレコード、NSSDM

【目的】透析患者の高齢化が進む中、透析看護師は様々な治療や生活支援に関する患者の意思決定支援に関わる機会が多い。三村は「高齢透析患者の価値観に基づく生きかたが尊重され、“その人らしい”自己決定がなされなければならない」1)と述べている。そのため透析看護師は、これまでの人生観を知り、これからの意向に沿い、意思決定支援を行うことが重要である。今回、前立腺がん疑いと診断された80歳代男性透析歴6年A氏は、大腸がん手術の経験から、透析に伴う痛みは耐えられても、他の痛みには恐怖心があり、生検を迷っていた。しかし看護師の関わり後、迷いは解消され、生検はしないと自己決定した。どのような意思決定支援が納得した自己決定に至ったのか、プロセスレコードと意思決定プロセスを支援する共有型看護相談モデル(以下NSSDM)を用いて分析評価した。【方法】A氏と看護師の意思決定支援場面をプロセスレコードにした。また看護師の判断や行動・言動をNSSDMの9つのスキルを用いて分析・考察した。倫理的配慮:個人が特定されないよう、個人情報の保護に努めることを紙面と口頭で説明し同意を得た。【結果】看護師は、第1段階にスキル1「感情を共有する」とスキル2「相談内容の焦点化につきあう」を活用すると、生検への迷いが表出された。そこへスキル3「身体状況を判断して潜在的な意思決定能力をモニターする」を活用すると、がん性疼痛と生検時に伴う痛みの恐怖が迷いの要因であることを明確にした。次に、第2段階にスキル5「患者の反応に応じて判断材料を提供する」を活用し、情報提供が必要と判断し、医師から低位前方切除術により生検時強い痛みを生じる可能性と、年1回の採血・MRIで経過観察できることの説明を受けた。またスキル7「周囲のサポート体制を強化する」を活用し、家族会議を提案すると、A氏の選択に従い長女はサポートを約束した。A氏は笑顔になり生検しないと決断した。最後に第3段階にスキル9「患者のニーズに基づいた可能性を見出す」を活用し、生検しない選択を最終確認すると「自分で決めたことに迷いはなし。透析は今後も頑張る。」と話した。【考察】本症例において、NSSDMの活用が患者の意思決定において有効であった可能性が示唆された。故に、透析看護師が行った意思決定場面においてNSSDMのスキルを活用したことで、患者が納得した自己決定ができた。