[口演Y-14-5] 全身麻酔下手術を受ける高齢患者の口腔機能の実態
Keywords:高齢患者、口腔機能低下症、周術期口腔機能管理、周術期看護
【目的】周術期口腔機能管理が施行されたが、手術を受けた高齢患者が誤嚥性肺炎をきたしフレイルに陥る事例を複数経験している。周術期口腔機能管理は特定の術式に限定されているため、高齢患者を対象に全ての術式において口腔機能の実態を明らかにする必要があると考えた。本研究は手術を受ける高齢患者を対象として、術前における口腔機能の状態及び口腔機能低下に関連する要因から、口腔機能の実態を明らかにすることを目的とした。【方法】対象は全身麻酔下で手術予定の65歳以上の患者70人。口腔機能の調査は口腔機能低下症の検査基準を基に口腔不潔、口腔乾燥、咬合力、舌口唇運動機能、舌圧(握力にて代替)、咀嚼機能、嚥下機能を実施した。口腔機能低下の要因分析のため、口腔機能低下症の診断基準に基づき口腔機能「低下群」と「低下なし群」の2群に分類した。関連要因は活動状況、認知機能、身体及び栄養状態を項目とし、2群の差について推計統計を行った。対象者へは研究の趣旨、自由意思の保証、個人情報の保護等について、文書及び口頭で説明し同意を得た。【結果】対象の平均年齢は74.3歳、前期高齢者44人62.9%後期高齢者26人37.1%、男性40人57.1%女性30人42.9%、バーセル・インデックス(BI)98.1点であった。術前の口腔機能の状態は口腔不潔24.3%、口腔乾燥62.9%、咬合力低下54.3%、舌圧低下12.8%、舌口唇運動機能低下57.1%、咀嚼機能低下21.4%、嚥下機能低下15.4%であった。口腔機能「低下群」は34人48.6%「低下なし群」は36人51.4%であり、口腔機能低下の関連要因は、後期高齢者の割合が「低下群」において前期高齢者より高かった(65.4%>38.6%;(カイ二乗検定p=0.030)。簡易栄養評価では低下群が11.5点と「低栄養の恐れ」の判定であった。【考察】術前の高齢患者はBIが高値より生活自立度が高く、口腔機能は口腔乾燥、咬合力及び舌口唇運動機能が低下し、口腔機能低下症の診断基準に5割が該当していた。口腔機能低下には後期高齢者及び低栄養の関連が推測された。そのため、術前の高齢患者へは手術が決定した時点より口腔機能をアセスメントし、低栄養状態及び後期高齢者に対して口腔機能低下予防の介入の必要性が示唆された。