[口演Y-15-2] 叫ぶことを繰り返す患者の看護
Keywords:高齢者、認知機能低下、生理的欲求
【目的】叫ぶことを繰り返す高齢で認知機能低下している患者に対する看護を振り返り、どのような看護介入が有効であったのか明らかにする。【方法】看護記録等のデータを収集し、既存の文献を用いて内容を整理した。倫理的配慮として、看護部の承認を得た。本研究のデータについては個人が特定されないように配慮した。対象者及び家族に本研究の目的と方法を説明し、了承を得た。【結果】A氏の叫ぶという行為を抑制具が原因と考え、抑制を解除するための方法を試みたが改善には至らなかった。そこで、叫ぶ理由を理解するために訴えに耳を傾け、訴えに対し迅速に対応した。A氏からは特に飲水と排泄の欲求が多く聞かれた。嚥下障害があるためスポンジで口腔内を湿らせることで口渇感の軽減を図った。本人から「やらないよりは良いかな。」との発言があった。また、正確な尿意ではなかったため生活リズムに合わせ時間でトイレ誘導を行ったことで失禁が軽減した。退院直前のA氏は表情が明るく、落ち着いた会話や看護師の説明を理解した行動が取れるようになり、叫ぶ行為はなくなった。【考察】事例を振り返り、A氏の叫びは混乱でなく欲求を訴えるための叫びであると考えた。飲水や排泄はマズロー欲求5段階の低階層である生理的欲求に該当し、先行して満たされるべきものである。トイレでの排泄は自尊心を守る行為であり、充足に近づけるための支援は重要な看護である。トイレ誘導を行うことは、失禁による不快感の軽減のみでなく、歩行のためのリハビリにも繋がった。飲水の欲求は疾患やストレスなど様々な要因が関係しており、充足が困難であった。しかし、水に浸したスポンジで一時的にでも口腔内に潤いを与えられたことで飲水欲求の軽減に繋がったと考える。また、訴えに基づいた対応策だけでなく、既往歴を含めた生理学的視点から飲水の欲求を引き起こす原因はないか分析することで別の対処方法を導き出すことができたかもしれない。今回の介入では不十分な点もあったが、A氏が叫ぶ理由に着目し、その理由から生理的欲求を満たすための看護支援を行ったことで、叫ぶ行為の改善と共に穏やかな生活に近づけることができたと考える。結論として、患者が叫ぶ理由に着目し、欲求が満たされるよう丁寧な看護としての関わりを持つことが患者の療養を支えることに繋がる。