[口演Y-15-5] 在宅療養が継続できている認知症高齢利用者への支援を振り返る
Keywords:認知症高齢者、訪問看護、在宅療養
【目的】認知症状が進行し、在宅療養が困難と思われた認知症高齢利用者への在宅療養継続を目指した訪問看護師の支援を明らかにする。【方法】事例研究。対象はA氏とその夫。診療録、看護記録からデータ収集し「ケアの意味をみつめる事例研究」の方法を用いて看護実践をカテゴリー化し分析した。対象者に研究内容と個人情報保護の遵守を説明し同意を得た。【結果】看護実践から3カテゴリー(〘〙)、5サブカテゴリー(《》)を抽出した。訪問当初は表情が硬く、ケアの拒否があるA氏と他者に頼らず介護してきた夫に《本人・夫の日々の生活、背景、思いを知る》《本人・夫に合わせたケアを先行しすぎずタイミング良く介入する》ことで〘本人・夫との信頼関係を築こう〙とした。A氏や夫の価値観や大切に思うことを知り、配慮した介入を心がけ、1ヶ月後には訪問看護師を認識され、2人で訪問を待ってくれるようになった。終始見守りが必要な状態で、介護量が増加しているA氏と夫に対して《本人・夫のできることを探して認知症状の悪化を予防する》《本人・夫の変化を捉えた環境づくり》を行い〘タイミングを逃さず在宅生活をより良く変えていこう〙とした。認知症認定看護師の同行訪問による介護指導や多職種でサービスの活用を検討し、夫の休息時間の確保につなげた。認知症状が悪化したA氏と今後の不安感が続く夫に対して〘本人・夫のパートナーとして寄り添っていこう〙とした。傾聴し相談に応じ《夫の不安や揺れる思いを受け止める》ことで、夫は一人で不安を抱え込まず、訪問時に自分の思いをしっかり伝え、迷い、揺れながらも納得するまで考え、最終的に「サービスを最大限に利用し、できる限り自宅で過ごす」と意思決定できた。【考察】エンパワーメント理論を用いて考察した。〘本人・夫との信頼関係を築こう〙とした援助関係の形成は「傾聴」に沿った支援であった。〘タイミングを逃さず在宅生活をより良く変えていこう〙では、A氏の活動性の維持や認知機能低下予防、夫の介護負担軽減の問題提起について、多職種を交えて解決に向けて話し合い「対話」に沿った支援であった。〘本人・夫のパートナーとして寄り添っていこう〙とした支持的な関わりによる意思決定支援は「行動」に沿った支援であった。これらより、訪問看護師はA氏と夫が在宅療養の継続という課題に対処するためのエンパワーメントを引き出す支援が行えていたと考える。