第54回(2023年度)日本看護学会学術集会 横浜

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口演

口演16群 高齢者、認知症の人の看護③

Wed. Nov 8, 2023 3:45 PM - 4:45 PM 第9会場 (G316+G317)

座長:野村 佳香

[口演Y-16-4] 身体抑制に対して抱えている看護師の思い

小池 明日香1, 疋田 百合香2 (1.静岡厚生連JA 遠州病院, 2.静岡厚生農業協同組合連合会)

Keywords:高齢者、認知症、身体抑制

【目的】現在医療現場では緊急・やむを得ない場合を除き、身体抑制が依然として実施されていることや、それに関連する倫理的問題がある。身体抑制は基本的人権を侵害するものとして「してはいけない」との認識がありながらも、患者の生命と安全を守るためや人員不足などという理由で、ジレンマに悩み苦しみながら身体抑制をしている現状があるのではないかと考えた。本研究では、A病院の看護師が身体抑制を実施する際の思いや倫理的配慮の実態を明らかにすることを目的とし、身体抑制の減少に向けインタビュー調査に取り組んだ。【方法】インタビューガイドを作成し、A病院の急性期一般病棟に従事する役職に就いていない3年目以上の看護師9名に対し、個別に半構造化インタビューを実施した。得られたデータを逐語録として作成し、コード化した後、類似する内容をまとめてカテゴリー化した。カテゴリーの内容については、研究者間およびアドバイザーの指導を受け、妥当性を検討した。最終的に抽出されたカテゴリーと関連性を先行研究と比較し考察した。本研究の参加は自由意思で行い、プライバシーの保護と本研究以外の目的以外に使用しない事を説明し同意を得た。【結果】看護師の身体抑制への思いは、4つのカテゴリーから生成された。看護師の身体抑制に対する思いは〈看護師の抑制における罪悪感〉という葛藤を持ちながら〈患者の安全を確保する抑制〉〈看護師の安心の確保〉〈知識や経験不足からの抑制〉の思いを持っていた。【考察】看護職の倫理綱領(日本看護協会2020)の中で看護職は人々の健康と生活を支援する専門職であり、人間としての尊厳及び権利を尊重するように努める、とある。今回のインタビューでの看護師は、患者がその人らしい生活を送れるように支援するためには身体抑制はしてはいけない、患者の自由を奪うと思いつつも、患者の安全を守ることや抑制に頼らざるを得ない状況の葛藤や、自らの知識や経験不足を感じながら身体抑制をしている現状であったと考えられる。医療は失敗しないことが当然であると期待され、看護師としての専門的な立場の自覚を促される(杉山ら、2017)。患者の安全を守らなければならないという看護師としての責任や使命感がさらに抑制を優先すると考える。看護師のその人らしい生活を送れるように支援したい、自由を奪いたくないという思いを大事にできる環境を作る必要がある。