[口演Y-18-3] 小児心療科病棟における携帯電話の導入について
―患者・家族の権利保障と職員の安全保障マネージメント―
Keywords:小児心療科、児童精神科、携帯電話
【目的】20xx年に開棟した小児心療科病棟では、安全で安心できる療養環境を目標に、多職種でより良い病棟運営について検討してきた。病棟内には精神保健福祉法に基づき公衆電話の設置がされており、通信の自由は保障されていたが、高額な通話料がかかり金銭的な負担が発生し、患者・家族から病棟内への携帯電話の持ち込み・使用の要望が上がるようになった。携帯電話の導入には個人情報の兼ね合いと使用する患者自身の判断能力の問題があるため慎重に対応する必要があった。そのため携帯電話を安全に運用できるか検討するチーム(以下、携帯電話チームと記す)を発足した。本研究では、小児心療科病棟における携帯電話導入のプロセスと患者・家族の権利保障、職員の安全保障について明らかにする。【方法】定期的に開催される携帯電話チームの会議録の中から抽出する。倫理的配慮として会議参加者全員の同意を得た。【結果】初回の会議では、将来的に患者の権利として入院中、携帯電話の利用ができるようにするというチームの目標を共有した。次に、小児心療科病棟の職員に携帯電話持ち込みに対して全員反対の立場に立ってもらい、リスクをリストアップしてもらった。そのリスクを元に課題を分類した。課題は6つに分類され、その内容は、1.破損、盗難に関すること2.情報漏洩に関すること3.無断借用に関すること4.課金問題に関すること5.依存症への対応に関すること6.携帯電話にまつわるトラブルに関することであった。この6つに対し、貴重品ロッカーの整備とインターネットに繋がらない携帯を準備すること、また、携帯電話を持ち込む際のルールと同意書の整備などを行い、導入に向け検討した。その結果、今の段階で小児心療科病棟に持ち込みながらも、患者が安全に使用でき、患者とその家族の権利を保障できる携帯電話は、カメラ機能のないキッズ携帯であると判断した。【考察】先行研究では、小児心療科病棟に携帯電話を導入することに大きな障壁がある背景として、患者・職員の個人情報の漏洩問題や課金・依存症問題が多数あった。しかし、こういった問題に対し、1つ1つ検証し対策を立てたことにより、小児心療科病棟に携帯電話が導入できた。そして、患者・家族の権利の保障と患者・家族、職員の安全が保障されたと考える。