第54回(2023年度)日本看護学会学術集会 横浜

Presentation information

口演

口演18群 精神看護②

Wed. Nov 8, 2023 1:15 PM - 2:15 PM 第10会場 (G318)

座長:田上 美千佳

[口演Y-18-4] 精神科長期入院患者への地域移行支援に関する実践報告

笠原 朋, 西 宏隆, 中島 真由美, 竹村 格, 郷 由里子 (東京都立松沢病院)

Keywords:精神科、長期入院、地域移行、実践報告

【目的】A精神科専門病院は、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムを推進しており、多職種協働による長期入院患者への地域移行・定着支援に取り組んでいる。2022年度、社会復帰病棟の長期入院患者に対する地域移行支援について調査・分析した結果、退院促進要因が示唆されたので報告する。【方法】2022年6月1日から2023年3月31日までの調査期間内に、B男性閉鎖病棟およびC女性閉鎖病棟の入院患者を対象に、患者属性(年齢、家族の有無、住居の有無)、入院期間、介護度(担送・護送・独歩)について、診療記録から後ろ向きにデータを収集し、単純集計・分析した。倫理的配慮は、個人データは特定されないように記号化し、当該施設の看護部倫理審査会の承認を得た。【結果】B病棟38名の平均在院日数は528日、最年少27歳から最年長88歳、平均54歳。介護度は護送が12%、独歩が88%であった。退院前6ヶ月の延外出は24件、延外泊は58件であった。退院した24名の退院先内訳は、自宅10名、グループホーム11名、施設3名であり、そのうち15名が入院前の住居に退院できた。転院は6名、院内転棟は8名であった。C病棟33名の平均在院日数は655日、最年少30歳から最年長78歳、平均58歳。介護度は護送が37%、独歩が63%であった。退院前6ヶ月の延外出は45件、延外泊は6件であった。退院した8名の退院先内訳は自宅4名、グループホーム1名、施設3名であり、そのうち3名が入院前の住居に退院できた。転院は5名、院内転棟は20名であった。平均在院日数はB病棟の方が約100日間短く、C 病棟よりADL は自立していた。【考察】精神科に入院する患者が1 年以上の長期にわたり閉鎖的環境の中で生活することは、身体機能と認知機能の低下を招きやすく、併せて買い物や金銭管理などのIADL(手段的生活動作)の低下を招く可能性がある。精神科看護師はADL の把握に加え、退院前訪問等で退院後の生活環境を把握し、多職種と協働して個々の患者のIADL を適切に評価する必要がある。また、ADL とIADL の維持、向上のためにはリハビリテーションの導入、外出・外泊訓練が重要であると考える。さらに、入院前の住居やADL を維持することは、住み慣れた環境での外泊訓練の実施が可能となり、退院促進要因として重要であることが示唆された。