[口演Y-2-2] 精神科病棟における新型コロナウイルスの院内クラスターに関する実態調査
Keywords:新型コロナウイルス、院内クラスター、アンケート
【目的】2020年以降、8回の新型コロナウイルスの流行の中で、病院や高齢者施設等において多数のクラスターが報告されている。A病院では、2021年から4回のクラスターを経験しているが、精神科病棟では職員の持ち込みがクラスター発生の主な原因と考えられる。そこで看護師と介護職員を対象にしたアンケート調査を行い、クラスターの原因を検討し、今後の感染対策に繋げることを目的とした。【方法】アンケート実施については倫理委員会の承認を得た上で、A病院の看護師および介護職員367名を対象に匿名での質問紙調査を行った。【結果】看護師164名(感染既往あり73名)、介護職員55名(感染既往あり28名)、不明64名(感染既往あり36名)の合計283名から返答を得た(回収率77.1%、 有効回答率77.4%)。職員感染経路としては病棟53名、家族22名、不明20名などであった。職員が感染を広めた原因として挙げられたのは、おむつ交換の時にアウター手袋を患者ごとに替えなかった51名、患者の衣類の洗濯をした22名、夜勤含め食事の時にマスクをしないで同僚と話をした14名などであった。患者間の感染原因としてはマスクをしてくれない107名、病棟内を歩き回っている117名、患者同士が密になり話をしている101名、病棟内の公衆電話を消毒せずに使用している29名などが挙げられた。【考察】従来のクラスター対策としては一般に公表されているガイドライン等を参考にするものが一般的だが、精神科病棟では各々の病棟での患者層の違いなど様々な要素があり、実際に働いている職員の意見を聞くことが必要と考えた。そこでアンケートを取ったところ、基本的には従来の3密(密閉、密集、密接) 対策が重要であることが確認できたが、精神疾患を有する患者の場合、マスク着用や手指衛生、身体的距離の確保といった新型コロナウイルス感染症の予防対策を十分に行うことが困難であり、感染拡大リスクは高いと考えられる。職員自身の振り返りとしては、おむつ交換で患者ごとにアウター手袋を替えることを徹底させることや、夜勤など人の目の少ないところでも黙食できるように指導を徹底することが重要であると示された。患者の食事介助や洗濯時には、マスクだけでなくフェイスマスクの使用も対策として有用と考えている。本研究結果を職員に周知し、今後の感染対策として活用していきたい。