[口演Y-20-1] 胃ろう造設患者の地域連携のためのツールの構築
―胃ろう管理手帳の作成を試みて―
Keywords:胃ろう管理、地域連携、在宅療養
【目的】地域の急性期医療を担うA病院では、年間30件以上の胃ろう造設交換(以後造設・交換とする)を実施しており、対象者は施設や療養型病院の患者であり、病状の変化等で療養の場が変化する特徴を持つ。地域で療養中の患者や家族が、安全に胃ろう管理できるよう独自の「胃ろう管理手帳」(以後手帳とする)を作成し、その有用性を明らかにする。【方法】調査期間は2020年7月から2022年12月までとした。調査方法:①手帳作成手順:日本コヴィディエン株式会社のPEGケアハンドブック等を参考に作成した。②研究対象者:手帳未使用群(2020年7月から2021年7月までにA病院で造設・交換を行った患者11名)と、手帳使用群(2022年12月までに、A病院で造設・交換を行った患者8名)の2群とし、造設・交換後のトラブルの有無等について診療録から情報を取得し、Fisherの正確検定を用い2群間で推測統計を行い比較した。③手帳使用群については主に胃ろうのケア実施者を対象に、胃ろう管理に関するアンケート調査を行い、数値についてはExcelを用い単純集計し、自由記述に関しては内容をまとめた。④倫理的配慮については、共同倫理審査委員会の承認を得て実施した。【結果】①手帳使用群のアンケートについては、8名中6名(75%)が回答した。Fisherの正確検定結果:手帳未使用群(11名)及び手帳使用群間での造設・交換後のトラブル発現の有無について有意差は見られなかった(p=0.16)。トラブルの内容としては、手帳未使用群ではバルーン管理不足による胃ろうの予定外抜去が起きた事例が1例と、「漏れとただれ」5名(56%)、「栄養剤や薬剤の詰まり」1名(11%)等であり、手帳使用群では「漏れやただれ」1名(16.7%)でのみであった。アンケートでは、手帳が日常ケアに役立つ(4名(67%)、「手帳は安全な胃ろう管理に役立つ(6名(100%))」と回答した。【考察】手帳の有無と造設・交換後のトラブルについて関連はなかった。しかし、本研究で、A病院での胃ろうについてのトラブルの内容が明らかとなった。急性期病院では、造設・交換患者に看護実践する時間は限られている中で、今回作成した手帳は地域の医療関係職種や施設・家族などと情報を共有できるツールであり、看護の継続性を担保し安全な胃ろう管理が可能となる可能性があると考える。