[口演Y-25-1] 啓発ポスターによる指差し呼称の継続に向けた取り組み
―看護師の認識の変化とインシデント数の変化による分析より―
Keywords:指差し呼称、インシデント、啓発ポスター、フェーズ理論
【目的】点滴の準備から施行、投与中においての指差し呼称を統一した方法で推進するための取り組みを実施。習慣化することでインシデント件数の減少に繋がるか比較し検討した。【方法】B病棟に勤務する看護師33名を対象に、指差し呼称について自記式調査を実施。令和4年9月17日~9月31日に毎日朝礼で自作した啓発ポスターを提示し、実際に指差し呼称を実施。B病棟内の点滴に関わる物品に「指差し呼称忘れず!」と記入したテープを貼る。啓発活動後、再度自記式調査を実施。活動前後のインシデント数の変化を比較し分析する。この研究はA病院の倫理審査より承認を得て、研究目的と内容を書面で看護師に説明し同意を得た。【結果】指差し呼称の必要性に対し、80~90%が「非常にそう思う」、100%が指差し呼称を「知っている」と回答した。啓発活動後の自記式調査では、指差し呼称を行う時に恥ずかしさがあると数名が回答した。「指差し呼称を行うようになったか」に対し60%が「非常にそう思う」、30%が「そう思う」と回答した。また「周囲の人たちは指差し呼称を行っていたと感じる」に対し、「非常にそう思う」「そう思う」の回答数が活動前より上昇した。「啓発活動後により指差し呼称への意識が高まったと思う」に対し85%が「非常にそう思う」と回答した。【考察】大部分の看護師は指差し呼称が医療安全を確保する大切な行為であると考えている。しかし、実際に実施している人の割合が少なく、必要性を理解していても現場で活用できていないと考えられた。啓発活動後、主観的、客観的にも指差し呼称を実施できており、今回の啓発活動が効果的であったと考えられる。A病棟での点滴に関するインシデント数は啓発活動後に減少し、追跡調査では11月のインシデント数は0件だった。これは時間の経過と共に指差し呼称が習慣化したためだと考えられる。しかし、インシデントは患者の年齢や理解度にも左右されるため、指差し呼称による結果だと断定できないが、フェーズ理論に基づくと、対象を指で差し、声に出して確認する行動によって、意識レベルを上げることができるとあるため、指差し呼称はインシデント予防に繋がると考えられる。また、活動後に指差し呼称をすることに恥ずかしさを感じると回答した看護師がいたことから、研究者自身がモデルケースとなり、指差し呼称が習慣的に行える職場風土を作ることが今後の課題であると考える。