[口演Y-25-2] 結核患者と一般病棟・地域包括ケア病棟患者の転倒発生要因の比較
―A病院の過去5年間のインシデント・アクシデントレポートの分析―
キーワード:結核、隔離入院、転倒、インシデント・アクシデントレポート
【目的】A病院が有する一般病棟・地域包括ケア病棟・結核病棟それぞれで発生した転倒事例を分析・比較し、結核病棟特有の転倒発生要因を明らかにする。【方法】A病院で2017年1月から2021年12月に報告された398件の転倒事例に関するインシデント・アクシデントレポートを対象とし、患者の基本情報と、転倒事例が発生した際の状況を把握するため、具体的内容と事例が発生した背景・要因を収集した。テキストマイニングデータ統計ソフトKH Coder3を用いて分析を行い、共起ネットワークを用いて結果を抽出した。抽出語の関連性を比較するため、相関係数を用いて分析した。A病院の倫理委員会の承認を受けて行った。インシデント・アクシデントレポートを使用するため、個人を識別できる内容を含むことから、個人を特定できないように配慮し実施した。【結果】収集したインシデント・アクシデントの件数は、結核65件、一般・包括343件、結核の転倒率は16.7%、一般・包括の転倒率は4.1%、入院日数の平均値は、結核43.1日、一般・包括22日、最多の日常生活自立度は結核、一般・包括ともにB2、最多の認知症高齢者の日常生活自立度は結核はⅡb、一般・包括は正常であった。栄養状態に関する血液検査データより、結核患者は低栄養状態の傾向にあることが分かった。共起ネットワークによる分析結果より、身体機能・感覚機能の低下、認知機能の低下、治療・疾患による影響、不適切な履物の選択、生理的欲求、ベッド周囲の環境が転倒に影響することが分かった。【考察】結核病棟で転倒した患者は一般病棟・地域包括ケア病棟の患者と比較すると、低栄養状態の傾向にあるため、入院時に行っている栄養スクリーニングにおいて、低栄養状態にある患者に対しては早期から栄養状態の改善に向けた介入が必要であることが示唆された。日常生活援助が必要な認知症高齢者が多いことから、入院時より認知機能やADLの評価を行い、転倒リスクがある場合の転倒予防策と定期的な評価の必要性が示唆された。転倒予防策は70歳以上の高齢者・排泄行動・夜間・ベッド周囲の環境・履物・疾患や治療の影響・ADL・認知機能に注目して個別性のある対策を考慮する必要があり、隔離病棟のため常に患者の傍にいることができないことから、看護師が患者の傍にいないことを充分に想定した転倒予防策が重要であることが示唆された。