第54回(2023年度)日本看護学会学術集会 横浜

講演情報

口演

口演25群 医療安全

2023年11月9日(木) 09:00 〜 10:00 第5会場 (G303)

座長:池田 美里

[口演Y-25-3] 病棟ラウンドから見た看護師による誤薬事故

―背景や要因を明らかにして―

長谷川 智美, 宮澤 初美, 髙橋 真紀子, 荻島 真弓 (順天堂大学医学部附属静岡病院)

キーワード:医療安全、誤薬事故、看護師、病棟ラウンド

【目的】A病院における看護師が記載した誤薬に関するインシデントには、原因が不明のまま対策を立てるものや、当事者のみに原因があるとされているものが多い。そこで、誤薬事故の中でも、特に多い与薬無実施の事故に焦点をあて、背景・要因を明らかにするための活動を行い、今後の事故防止対策の検討に繋げたのでここに報告する。【方法】誤薬事故を減少させるための取り組みを行う師長ワーキンググループを作り、メンバーで病棟ラウンドを行った。病棟での対応者はリスクマネージャーに依頼した。事前に事故の状況を把握してもらい、グループメンバーで質問をしながら、要因や情報、関係者の動きを時系列でまとめた関連図を用いて、一緒に原因分析を行った。病棟全体の問題としてとらえられるように、インシデントを起こした個人ではなく、リスクマネージャーに働きかける事を意識した。【結果】病棟ラウンドを行い、ダブルチェックや薬剤準備から投与までの方法、病棟スタッフの動きと考え等を具体的に確認した。その結果、情報収集の段階と点滴準備のプロセスに問題がある事が明らかになった。まず、電子カルテ上での情報収集の方法が人により違っていた。指示の中に5Rが明記されておらず、何ヵ所も画面を開く必要があり、情報収集が煩雑となっていた。そのため、受け持ち患者の点滴指示を把握しないまま勤務している現状も明らかになった。点滴準備では部署によりダブルチェックの方法が違っていた。また、薬剤準備から実施までに、何人ものスタッフが関わっていた。【考察】これまでは、誤薬事故が発生すると、原因について当事者や病棟内で分析し、対策を立ててきた。今回、病棟ラウンドで第3者が加わり一緒に考える事で、情報収集を含む与薬のプロセスを振り返る事に繋がり、事故原因について違った角度から分析する事が出来た。病院全体での薬剤確認ルールはあるものの、方法が統一されていなかったため、部署によって異なるチェックが実施されていた。さらに、薬剤実施までに何人ものスタッフが関わる事で、結果的にチェック機能が働かなくなり、責任の所在も曖昧になっていた。また、部署独自のルールが業務を煩雑にし、事故原因となる事も見えてきた。今後は、ラウンドで見えた問題をリスクマネージャー間で共有し、業務プロセスのスリム化、均一化を進める事が事故防止対策には必要であると考える。