第54回(2023年度)日本看護学会学術集会 横浜

講演情報

口演

口演28群 周術期の看護①

2023年11月9日(木) 13:15 〜 14:15 第6会場 (G304)

座長:遠藤 篤也

[口演Y-28-1] 乳房再建術で床上安静期間を経験した患者の思いと看護への期待

関口 加奈子, 深井 咲衣, 寺下 祥代, 島井 彩也子, 堀元 彩花 (富山大学附属病院)

キーワード:乳房再建術、床上安静、乳がん

【目的】乳房再建術を受ける患者が、術後1日目にICUから一般病棟に帰室し翌日離床できるまでの間に抱いていた思いを明らかにすることで、乳房再建術を受ける患者への理解を深め、質の良い看護の提供への一助とする。【方法】質的記述的研究を行った。A病院で腹部穿通枝皮弁による乳房再建術を受けた患者にインタビューガイドを用いた半構造的面接法を行った。インタビューデータを逐語録とし、ICUより一般病棟へ帰室後から離床できるまでの患者の思いについて言葉を抽出してコード化した。コードの共通性を見出す中で抽象度を上げてサブカテゴリー及びカテゴリーを整理・統合した。対象者に研究目的や方法、参加や中断の自由、参加拒否により不利益のないこと、プライバシーの保護、匿名性の遵守、得られた情報を研究目的以外に使用しないことについて文書を用いて説明し、同意書への署名をもって協力を得た。【結果】10名の乳がん女性にインタビューを行った。乳房再建術を受ける患者は、術後の一般病棟での床上安静期間中に《乳房を喪失する悲しみ》《乳房再建できることへの喜び》《術前・術後の心身への不安》《床上安静による苦痛》《看護ケアによる苦痛緩和》《手術を乗り越えるための生きがいや希望》《医師や看護師への感謝》という思いを抱いていた。【考察】乳房再建術を受ける患者は、床上安静や指示体位の保持といった身体的な制限による苦痛や、がんへの悲観的な思いを含む乳房を喪失する悲しみといった精神的、スピリチュアルな苦痛、家族への申し訳なさなどの社会的苦痛、といった全人的な苦痛を感じていた。しかし、それらの苦痛を、乳房再建できることへの喜びをよすがとし、乳房を失うという女性性や自己像を大きく損ないかねない手術を前向きに捉え、医療者の援助を得て乗り越えようとしていた。A病院では術後一般病棟においても皮弁の血流確認を1時間ごとに行っている。仰臥位同一体位の保持は1時間程度で限界を感じ、介助グローブによる除圧ケアはその身体的安楽に効果があった一方、精神的安楽には効果が低かったとの報告がある。除圧ケアに加え、術前からの説明、患者に寄り添った声かけを行っていくなど、床上安静を保持することでの苦痛に対する看護援助を検討していくことで、よりよい看護を提供することにつながると考える。