[口演Y-3-1] A病棟における身体拘束時間と新型コロナウイルス流行期と非流行期との関連
Keywords:身体拘束、身体拘束時間、COVID-19
【目的】A病棟では身体拘束を減らすために身体拘束時間(以下、時間)の記録を行っている。新型コロナウィルス感染症(以下、COVID-19)の流行によって、時間にどのような影響があったかを明らかにする。【方法】2021年8月から2023年3月までの平日・日勤帯の患者を対象に、COVID-19の流行期と非流行期とで、使用頻度の高い拘束具(クリップセンサー・ミトン)についての時間(単位:分)の要約及び比較を行った。時間の記載漏れについては480分(日勤8時間拘束したと仮定)として扱った。比較にはWilcoxon順位和検定を用いた。本発表はA病院倫理委員会の承認を得ている。【結果】対象期間中、①2022年2月②2022年8月~9月③2022年12月~2023年1月の計5ヶ月で入院患者とスタッフにCOVID-19陽性者及び濃厚接触者が急増した。この期間の患者の陽性者が合計40名、看護師の陽性・濃厚接触者の合計が32名であった。この期間は他病棟の看護師の応援で対応を余儀なくし、他病棟の応援者は合計96名であった。流行期の拘束具装着の中央値[四分位範囲]、最大値は(クリップセンサー)210[60-480]、(ミトン)390[180-480]であるのに対し、非流行期は(クリップセンサー)120[60-360]、(ミトン)210[120-360]で、流行期は非流行期と比べクリップセンサー、ミトンともに時間が有意に長かった(クリップセンサー:p < 0.001、ミトン:p < 0.001)。また記載漏れについては、調査開始直後と流行期に多く認めた。【考察】COVID-19流行期は、不慣れな感染対応や他部署からのスタッフで対応した。他部署のスタッフへA病棟の取組みについて周知できず、身体拘束解除への取組みの推進が難しかったため時間に差を認めたと考えられる。また病棟内にはCOVID-19の陽性者、濃厚接触者及び非感染者が混在しており、病室に看護師がすぐに入室できないことや病室内に看護師がいてもカーテンで隔離されており詳細な行動の観察が困難であったことも時間が増加した要因として考えられる。COVID-19の発生から3年以上が経過し5類へ移行するが、今後は隔離患者の身体拘束も解除できるような仕組みと、記載漏れの撲滅を通じて身体拘束を減らすための継続的な改善が必要と思われた。