[口演Y-3-5] 当施設で経験したSARS-CoV-2陽性褥婦および出生した新生児への育児支援に関する検討
Keywords:SARS-CoV-2陽性妊産褥婦、COVID-19看護、産後ケア
【目的】COVID-19が2類相当とされていた期間に当施設が経験したSARS-CoV-2陽性褥婦および出生した新生児への育児支援を振り返り、適切な対応指針を得ることを研究目的とした。【方法】2020年4月から2023年3月の間に当施設で分娩したSARS-CoV-2陽性褥婦について、当施設の倫理委員会の承認を得て、褥婦の属性、入院経過、出生した新生児の経過、育児支援を診療録から後方視的に検討した。【結果】対象は36例で、初産婦8例、経産婦28例、分娩時の週数は中央値39週0日(29週2日-41週3日)で、早産期が4例(11.1%)であった。当施設では、感染隔離期間中は母児異室で観察を行っており、面会方法としては、新生児を撮影した動画視聴、画面対面式のリモート面会、窓越し面会等を実施した。初産婦8例への育児指導については、ベビー人形で模擬練習を実施したり、沐浴と授乳は、それぞれの新生児の様子を撮影して解説した。退院後の継続支援として感染期間終了後に母児同室2例、母乳外来通院2例、NICUでの育児練習1例、電話訪問1例、産後ケア事業施設宿泊2例、保健師フォロー1例を実施した。産後ケア事業施設との連携に際しては、感染症発生前に妊婦健診を行っていた産科施設を利用したケースと、自宅近所の産科施設を予約利用したケースがあった。どちらも、分娩経過、身体状況、新生児の経過、育児手技が確立できていない状況を、看護サマリーと医師間での電話連絡で情報提供した。産後1ヶ月健診を当施設で実施した33例のEPDSは中央値2点(0点-10点)で、10点以上の高値だった1例は精神疾患既往のある初産婦であった。母乳支援について、感染期間中は母乳を破棄しながら搾乳ケアを行った。1ヶ月健診時点での完全母乳栄養率は30.3%であり、同期間の当施設の全褥婦の28.2%と同等であった。【考察】当施設では院内感染対策として、母児異室でのケアをおこなったが、EPDSが高値となった褥婦は少なく、面会方法の工夫、感染期間終了後の継続的な支援は有効であった。新興感染症対策として手探りの状況での対応も多かったが、看護の創意工夫により、初産婦への育児指導など個別性に応じたケアが実践できた。一方で、産後ケア事業施設との連携はSARS-CoV-2陽性褥婦の育児手技獲得にも有用であり、情報共有の工夫が今後の課題である。