[口演Y-3-6] COVID-19病棟における看護師が抱える倫理的問題
キーワード:COVID-19、倫理カンファレンス、患者・家族のニーズ、看護師の思い
【目的】COVID-19に関連した患者・家族のニーズと、倫理的問題を感じた時の看護師の思いを明確にする【方法】患者に寄り添うことや触れることが制限されており、看護師は倫理的葛藤を感じていたため、カンファレンスを実施した。データ収集期間は2021年8月から2022年9月。対象はA病棟に勤務していた看護師26名。データ収集は4ステップモデルを使用したカンファレンスの記録を用いた。研究方法は質的研究。分析は2022年5月から12月。32事例のカンファレンスで得た記録よりコード化し、徐々に抽象度を上げカテゴリー化し、主観的な分析を避けるために複数のメンバーで実施。倫理的配慮はB病院の倫理審査委員会の承認を得た。得られた情報から個人が特定されないよう配慮し、カンファレンスに参加した全ての看護師の同意を得た。【結果】患者のニーズでは〈話を聞いてほしい〉〈孤独から抜け出したい〉〈正しい情報が欲しい〉〈体力低下への抵抗〉〈自由にしたい〉〈清潔に過ごしたい〉〈もっと私の訴えを理解してほしい〉〈生きがいを感じたい〉〈院内ルールの押しつけ〉〈治療に対する家族の希望〉の10のカテゴリーが抽出された。看護師の思いでは〈自宅療養切り替えへの不安〉〈感染拡大への不安〉〈患者の不安を軽減したい〉〈隔離によって行動が制限されている患者への申し訳なさ〉〈他職種との連携不足〉〈入院のルール・マナーを守ってほしい〉〈隔離環境下でも日常の看護ケアを実施したい〉〈訴えを理解したい〉という8のカテゴリーが抽出された。【考察】患者のニーズは〈清潔に過ごしたい〉〈自由に過ごしたい〉など日常的なものがあり、看護師は療養環境を患者の日常生活に近いものにしていくことが重要だと考える。また〈話を聞いてほしい〉〈孤独から抜け出したい〉というニーズから、隔離環境は患者の生きがいさえ見失ってしまいかねないものであり、看護師として、思いを表出できる環境を作ることが必要であると考える。看護師の〈ルール・マナーを守って欲しい〉という思いと、患者にとってはそれが〈院内ルールの押しつけ〉と相反することから、患者の思いを真摯にくみ取りながら必要な説明を実施していく必要があると考える。隔離環境下で看護師が抱える倫理的問題は、制限から生じる患者・家族のニーズに応えることができない葛藤と、払拭できない感染拡大への不安であった。