第54回(2023年度)日本看護学会学術集会 横浜

講演情報

口演

口演31群 創傷ケア②

2023年11月9日(木) 10:30 〜 11:30 第7会場 (G312+G313)

座長:小田 慈

[口演Y-31-2] 皮膚・排泄ケア認定看護師による介護老人福祉施設への遠隔褥瘡コンサルテーションの試み

島田 美穂1, 林 裕栄2, 武田 美津代2, 善生 まり子2, 辻 礼子2 (1.越谷市立病院, 2.埼玉県立大学)

キーワード:遠隔褥瘡コンサルテーション、皮膚・排泄ケア認定看護師、介護老人福祉施設、褥瘡

【目的】皮膚・排泄ケア認定看護師(以下、WOCN)の9割は病院に勤務している。褥瘡経過が長期化しても WOCN不在の施設では、相談できず悪化することがあり、早急に対応することが望まれる。研究者(WOCN)が介護老人福祉施設(以下、特養)の施設長(看護師)から褥瘡ケアの相談を受け、所属が異なる特養看護師(以下、看護師)へのWOCNによる遠隔褥瘡コンサルテーション(以下、遠隔)を通して課題を明らかにすることを目的とした。【方法】A市内特養に入居する褥瘡保有者と褥瘡ケアに携わる看護師を対象にX年12月から2か月間介入した。文書と口頭で個人情報保護と匿名化、写真撮影の必要性、写真データの厳重な取り扱い、遠隔の通信料負担を施設長に説明し同意を得た。入居者及び代諾者には施設長に説明を依頼し同意を得た。初回は対面、2回目からWeb会議システム(Zoom)を用いて遠隔で実施した。Zoomの映像と写真、看護師の報告から DESIGN-R2020で褥瘡を評価し、看護師の褥瘡ケアの変化は言動や行動で評価した。【結果】入居者は70歳代女性で虚血性腸炎の入院治療後、仙骨部重度褥瘡で処置を必要とした。初回は対面で状況を確認し今後のケアを提案した。遠隔は約2週間ごと4回介入し、通信不良はなく実施できた。看護師は2回目に洗浄方法や計測方法を習得できた。ポケット拡大があり看護師と相談し、ポジショニングやマットレスを変更した。3回目肉芽が一部暗紫色に変化したが、要因を話し合い看護師から頭側挙上方法の統一が課題と意見が挙がり、協働してケア方法を修正し摩擦とずれを排除できた。DESIGN-R2020は初回46点から5回目42点で褥瘡は改善した。施設長は「WOCNの介入で看護師の士気や褥瘡ケアの質が向上した」と評価した。【考察】WOCNの介入により、褥瘡悪化の要因等を検討することで看護師の褥瘡への関心が高まり、新たなケアや変更の提案に理解が得られ褥瘡ケアが変化する。褥瘡が悪化した際も遠隔で改善策が提案でき、看護師が褥瘡改善の知識を持つことで、さらなる重症化を阻止できる。遠隔であっても看護師が中心となり、褥瘡ケアを統一する必要性を認識することで協働を促進し、褥瘡改善に役立つ。遠隔の課題は、通信不良やセキュリティ上の問題に対応する取り決めの強化、機器や操作の人員確保、撮影に適した環境調整が必要と考える。