[口演Y-33-6] 院内トリアージの現状と今後の課題
―JTASを用いたトリアージ判定とトリアージナースのインタビューから―
Keywords:救急外来、JTAS、教育
【目的】A施設救急外来のトリアージナース(以下ナースとする)のWalk-in患者の実際のトリアージを日本版救急患者緊急度判定支援システム(以下JTASとする)に基づき調査し、アンダートリアージ(以下UTとする)の要因を明らかにする。そして、今後の教育の示唆を得る。【方法】A施設のナース12名とWalk-in患者のトリアージ症例120件を調査した。1.調査項目は電子カルテの記録から、収集・集計した。対象患者のうち、緊急度判定が可能であった症例78件に対して、患者推移を測るため、データ分析ソフトSPSSⓇ Statistics26を用いた。2.JTASに基づき、修正JTASレベルを判定した。3.多重ロジスティック回帰分析により、UTの要因を明らかにした。4.3-4名を1グループとし、半構成型面接法でインタビューを実施した。得たデータは、カテゴリーに分類した。倫理的配慮は、研究へ参加の有無・匿名性の厳守、協力中止による不利益が被らない事を文章で説明し同意得た。A施設倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号第2022-25)。【結果】1.受診年齢層は65歳代が多かった。2.実際のJTASレベル判定と修正JTASレベル判定の評価には中等度の相関があった。UT率は28.5%であった。3.UT判定の要因の検証によりバイタルサイン・疼痛の有意差は認めなかった(p>0.05)。4.救急経験年数は6年目以上が58.3%を占めていた。ナースの語りから「トリアージナースとしての成長への環境づくり」「優先順位決定の正当な判断を身につける」「テンプレートを活用し、記録の充実を図る」「タイムリーな医師との連携構築」「トリアージの必要性とJTASの活用を理解する」の5つのカテゴリーに分類された。【考察】1.A 施設は65 歳代の受診年齢層が多く、高齢化に伴う複数の基礎疾患を有しており、フィジカルアセスメントと患者背景の理解や問診力の向上が必要である。2. JTAS の活用や得られた情報と患者の背景を総合的に判断する能力を高める教育体制が必要である。3.語りからWalk-in 患者の緊急度判定の難しさと評価の価値が重要である。4.JTAS の活用で、緊急度判定の信頼性が高くなり、UT 率の減少に繋がると考える。5.情報共有・症例検討の開催により、スキルアップや医師との連携につなげられる体制が必要である。