第54回(2023年度)日本看護学会学術集会 横浜

講演情報

口演

口演35群 看護管理者等の実践・能力

2023年11月9日(木) 10:30 〜 11:30 第8会場 (G314+G315)

座長:渡邉 眞理

[口演Y-35-1] 総合病院の看護師長における情動知能を含むリーダーシップ行動の関連要因

―リフレクション、メタ認知、主体性およびその交互作用―

増田 誠一郎 (静岡県立総合病院)

キーワード:看護師長、リーダーシップ行動、リフレクション、メタ認知、主体性

【目的】優れた看護管理者には情動知能の果たす役割が大きく、その有益性も報告があるが、情動知能を含めたリーダーシップ行動の関連要因は報告が少ない。看護師長のハイパフォーマンスには行為を改善することを目的とした認知的活動である「リフレクション」が必要な要素であるという記述が散見される。また、認知的活動それ自体を対象として認知する心の働きである「メタ認知」、自分事として捉え自ら行動を起こして責任をもつことである「主体性」はリフレクションを促進すると考えられる。そこで仮説として、1)リフレクションの実践度が高いほど情動知能を含めたリーダーシップが発揮される、2)メタ認知と主体性はリフレクションがリーダーシップに及ぼす効果を強めると設定した。よって本研究は上記仮説を探索的に検討することを目的とした。【方法】地域医療支援病院19施設の看護師長342名を対象に無記名自記式質問紙調査を行った。調査項目は、属性、メタ認知、主体性、看護師長の職務および業務内容を考慮して「ホワイトカラーにおけるリフレクション尺度(以下、Ref)」、「看護管理者のリーダーシップ行動尺度(以下、情動知能的および管理的LS)」とした。分析方法は属性、メタ認知、主体性をRefスコアによる3群間で比較(一元配置分散分析および χ2検定)し、各LSスコアを従属変数とした階層的重回帰分析を行った。統計学的有意水準は5%とした。対象者に研究の目的、個人情報の保護、自由意思による研究参加、研究結果の公表等について説明し同意を得た。既存の尺度は開発者に使用許可を得た。【結果】有効回答164名を分析対象とした。Refスコアによる群間比較では、メタ認知(p<0.001)と主体性(p<0.001)にのみ有意差を認めた。階層的重回帰分析の結果、Refスコアは正の関連を示した(p<0.001)。しかし、Refスコアとメタ認知、主体性それぞれの交互作用は認めなかった。【考察】仮説1は支持され、先行研究で記述されてきたリフレクションはリーダーシップが発揮されるための資源として重要であることが確認できた。同時に、それは特に定量された形で支持した点において新規性があった。一方、仮説2のリフレクションの促進要因としてのメタ認知、主体性については正の相関が確認されたが、相乗効果までは確認できなかったため、さらなる究明が必要である。