[口演Y-37-2] A病院の病棟医師・病棟看護職員のDNARの認識
Keywords:DNAR、認識、ジレンマ
【目的】人生の最終段階におけるガイドラインの改訂とともに、各医療施設では「DNAR (Do Not Attempt Resuscitation)に関するマニュアル」が整備されている。しかし、先行研究によると、DNAR の拡大解釈によって治療の中止や差し控えが行われていることなどが指摘されている。本研究の目的は、A 病院の病棟業務に関わる医師と看護職員のDNAR に対する認識を明らかにすることであり、DNAR の正しい理解の促進と医療チームで協働する体制構築の一助になると考える。【方法】1. 調査方法:A 病院の医師356 名と看護職員426 名を対象に無記名自記式質問紙調査を実施した。調査内容は医師・看護師ともに、基本属性、DNAR の理解、決定プロセスとDNAR 指示後の治療の現状、ジレンマなどで構成した。調査期間は2022 年9 月~ 2022 年12 月であった。2. 分析方法:医師と看護師の質問項目ごとの集計を行った。解析ソフトはIBM SPSSⓇ Statistics を使用した。3. 倫理的配慮:研究への参加は自由意思であり参加しないことで不利益は生じないこと、無記名自記式質問紙調査であり個人が特定されないこと等を依頼文に明記した。【結果】医師の有効回答率は36.2%、看護師の有効回答率は35.9%であった。DNAR に関する研修受講があるものは、医師36.4%、看護師47.7%であった。DNARを「心停止時に心肺蘇生を行わないこと」と正しく理解していたのは、医師46.5%、看護師46.7%であった。決定プロセスとDNAR 指示後の治療の現状では、本来の適応ではない患者にDNAR を検討することや、蘇生手技以外の医療項目についても「実施されていない」という回答があった。DNAR 指示に関するジレンマでは、医療者間でDNAR の認識に差があること、患者本人の思いが尊重されていないと感じること、DNAR 指示後に苦痛緩和の差し控えが行なわれた患者への関心が減ること、などの回答があった。【考察】医師、看護師ともにDNAR を正しく理解しているものは半数以下であり、誤ったDNAR の検討や医療処置の差し控えが行われている現状が明らかになった。そして、医療者のDNAR の知識不足や臨床現場の混乱がジレンマに繋がっていると推察された。今後、正しい理解の促進に向けて、研修方法の検討などが必要と考える。