第54回(2023年度)日本看護学会学術集会 横浜

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口演

口演39群 看護職の心の働きとその対処③

Thu. Nov 9, 2023 10:30 AM - 11:30 AM 第9会場 (G316+G317)

座長:石川 紀子

[口演Y-39-1] 緩和ケア病棟の看護師が仕事中に「プラスの感情を抱くのはどんな時か」に焦点をあてて見えたこと

大崎 明日香, 塚本 修子, 蛯子 智美, 安達 むつみ (北海道消化器科病院)

Keywords:緩和ケア病棟、看護師、プラスの感情

【目的】A 病院緩和ケア病棟で働く看護師が、辛さや困難感ではなく、プラスの感情を抱くのはどんな時かを明らかにし、少しでも前向きな気持ちで働くための策を見出すことを目的とした。【方法】看護師13 名をA 病院緩和ケア病棟の経験年数が偏らないように4 つの班に分け、「プラスの感情を抱くのはどんな時か」をテーマにグループ単位で半構造化面接法を行った。録音データから逐語録を作成し、「プラスの感情」の定義に合った内容を抽出して類似するものを集め、意味内容を損なわないように表題をつける作業を繰り返した。最終的に5 つの表題が見出された。倫理的配慮として、A 病院看護部看護研究倫理委員会で承諾を得た。対象者に研究参加の自由意志、研究協力諾否の自由、個人情報やプライバシー保護の遵守等を説明し同意を得た。【結果】看護師は様々な場面でプラスの感情を抱いており、その内容は、[ ケアに対する患者からの良い反応]、[ 患者の物語が見えた時に生じる感情]、[ 私たちのチーム]、[ 死を前提にした患者との関わりで得られる感情]、[ モチベーションを高める方法] の5つに分けられた。【考察】看護師は、自分が考えた[ ケアに対する患者からの良い反応] にプラスの感情を抱いていた。また、仲間が試行錯誤してケアをする姿や、それに対する患者の良い反応は、個人だけではなく[ 私たちのチーム] 全体にもプラスの感情を与えていた。嫌なことがあっても、[ 私たちのチーム] に持ち帰るとプラスの感情に転換されていた。更に[ 私たちのチーム] では、患者の情報を皆で紡ぎ合わせ、[ 患者の物語が見えた時に生じる感情] が生み出されていた。看護師のプラスの感情は患者から与えられ、それは看護師個人を通してチームにもプラスの感情を与えていた。チームのプラスの感情は看護師個人を通して患者ケアに反映され、プラスの感情は、看護師個人、チーム、患者の間を循環し、それが看護の質の向上に繋がっていると考える。本研究の仮説では、プラスの感情として日常の小さな出来事が挙げられると予測したが、結果は全て、困難さを感じ、悩み、考えながら看護している状況の中でしか生まれないプラスの感情であった。本研究により、困難な状況にありながらも、それぞれがプラスの感情も抱いていること、それが質の高いケアの提供に繋がっていると知ることが、前向きに働くことができる一助となるのではないかと考える。