第54回(2023年度)日本看護学会学術集会 横浜

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口演

口演4群 ポストコロナ社会の看護への示唆~看護の改善への取り組み②~

Wed. Nov 8, 2023 3:45 PM - 4:45 PM 第6会場 (G304)

座長:國枝 美代子

[口演Y-4-1] コロナ病棟における皮膚科患者の保清ケアの振り返り

高柳 枝里, 植松 真由, 松尾 正人 (順天堂大学医学部附属静岡病院)

Keywords:コロナ、皮膚ケア、天疱瘡

【目的】2022年某日、COVID19専用病棟に移行しつつあった状況のなか、頭皮や顔面に及ぶ全身の水疱・痂皮がある落葉状天疱瘡患者が入院していた。マスクの着脱の度に皮膚が剥がれ出血していた。シャワー室は病棟外にあり使用できず、病室には洗面所もない状況下であり、患者に十分なケアが行えなかった。適切な保清ケアと有効な処置を振り返り今後に生かす。【方法】皮膚ケアに関わった4名の看護師にケア内容や心理面に関してインタビューを実施し、事例を検討した。患者の研究参加の自由意志の保証と意思表示の方法を明示、個人情報とプライバシー保護に配慮し、家族と本人から書面で同意を得た。【結果】看護師へのインタビュー結果から、1年目のスタッフは、「ディスポタオルで清拭し、医師と体幹のガーゼを交換した。次に担当した際、顔にメロリンガーゼが貼付してあり、こういう処置もあるのかと気づいた」。2年目は、「1人で処置を行い、顔のマスクの汚染に気づいていたが、病棟に適応することで精一杯で何も出来なかった」。10年目は、「水は感染源になるという当時の考えから、使いたくても多くは使えなかった。メロリンガーゼをポンチョにする方法は知らないと出来ないので、医師を交えて方法の統一化をすれば良かった」との意見が挙がった。【考察】天疱瘡の外用療法の先行研究では、病変部の洗浄を行い外用薬を塗布すること、水疱形成時のスキンケアの原則としては、泡で洗いすすぎをしっかり行うこととあり、患部の洗浄が基本である。洗浄やシャワー浴ができる環境を整えることが皮膚治癒に有効であることが分かった。今回、COVID19罹患患者を受け入れ始めて間もない時期であり、受け持ち看護師は各々1人で困難に陥っていた。心理学者のブルース・W・タックマンが提唱した、チーム形成後の変化を段階的に捉えた概念であるタックマンモデルによると、混乱期であった。この時期は話し合いが重要であることから、カンファレンスでケアの検討と共有をすべきであった。私たちが皮膚ケアに影響を与えた要素は、環境の変化に対する高ストレス状態、自己の感染リスクの懸念による患者への接触時間を短縮、汚染した物品の処理方法が未確立、ケアが未統一、療養環境の不十分さが挙げられた。再度危機的状況に陥った際は、今回明らかになった課題を再認識し、適切な処置を患者に提供できるようにしていきたい。