第54回(2023年度)日本看護学会学術集会 横浜

講演情報

口演

口演4群 ポストコロナ社会の看護への示唆~看護の改善への取り組み②~

2023年11月8日(水) 15:45 〜 16:45 第6会場 (G304)

座長:國枝 美代子

[口演Y-4-3] 感染伝播予防のための感染リンクナースとしての取り組み

―「見える化」がもたらす病棟スタッフの意識改革―

佐々木 恵理子, 加藤 栄子 (秋田病院)

キーワード:感染伝播予防、感染リンクナース、見える化

【目的】A病棟では、感染症保菌者の選別が容易にできるよう、感染症を色別し排泄表へ記載していた。しかし、この排泄表は排泄用カートに設置していたため、排泄介助以外の場面で情報が把握しにくいとの声が病棟スタッフから聞かれた。そこで今回、「見える化」に着目し新たに感染症保菌者ボードを作成したことで、病棟スタッフの意識改革に効果的であったかを明らかにする。【方法】研究対象は、A病棟看護師19名、看護補助者4名。研究期間は、令和2年4月から令和2年12月。レヴィンの変革理論に沿って実施。第一段階「解凍」では、多職種との情報共有が不十分なことから、感染伝播の危険性を説明し、ボード活用への共通認識を得る。第二段階「変革・移動」では、ボードの活用方法(掲示場所、掲示内容、内容の更新者)を説明。第三段階「再凍結」では、行動が定着、習慣化するようボードの活用について、病棟カンファレンスで定期的に中間評価を実施した。その後、病棟スタッフの意識調査を目的とした無記名式の選択式アンケートを実施し、結果を単純集計し分析した。なお、B病院の倫理委員会の承認を得て実施した。【結果】「解凍」では、活用方法について病棟スタッフ自らリンクナースへ確認する姿が見られたことや、ナースステーション内にボードを設置したことで、「見やすい」「保菌者が把握しやすくなった」との声が聞かれた。「変革・移動」で、実際にボードの活用を開始したところ、ケアの順番を組み立てる際や、外部清掃業者との情報共有に活用されるようになった。また、当初はリンクナースが行っていたボードの修正や追加を、病棟スタッフが行う場面も見られた。「再凍結」では、病棟カンファレンスにより、スタッフから活用に関する意見が聞かれたり、また感染委員会からの新たな意見を取り入れて修正を加えた。アンケート結果より、「ボードを活用していた」と回答した者は95%、「ボード活用により感染状況を把握しやすくなった」と回答した者が83%であった。また、「自身の感染対策への意識が変化したと感じる」と回答した者は61%となった。【考察】現状や危機感をスタッフ間で共有し、新たな方法を受け入れ実行した結果、ボード活用の定着・習慣化につながった。また、保菌者の選別が容易となったことからも、ボードを用いた「見える化」が、情報の把握に効果的であり、その結果、意識改革にもつながったと言える。