[口演Y-42-4] A病院新人看護師のメンタルヘルス研修による不安および抑うつへの効果
キーワード:新人看護師、レジリエンス、セルフ・コンパッション、メンタルヘルス
【目的】A 病院で新人看護師を対象に2021 年から導入したポジティブ心理学を取り入れたメンタルヘルス研修(以下、研修)の、不安・抑うつへの効果を明らかにする。【方法】A病院に2022 年4 月入職した新人看護師57 名に、研究内容を書面で説明し、日本語版HADS(以下、HADS)、二次元レジリエンス尺度(以下、BRS)、セルフ・コンパッションン尺度短縮版(以下、SCS-SF)を研修前後に実施した。質問紙は無記名とし、回答および回収箱への投函をもって研究同意とした。研修後の質問紙回答は、研修で学んだ対処法を実践する期間として2 週間を設け実施した。【結果】質問紙回収は、研修前36 名(回収率63.2%)、研修後17 名(回収率29.8%)、前後ともに回収できた人数は17 名で有効回答率は100%であった。研修前の不安が、明確にありと疑いで52.9 %、研修後は46.0 %(p=0.715)、抑うつは研修前が23.5%、研修後が35.3%となった(p=0.409)。前後比較では、不安(p=0.512)、抑うつ(p = 0.741)で、不安と抑うつは、研修前(p=0.049)、研修後(p=0.002)であった。BRS は不安が楽観性と自己理解に、抑うつが楽観性、統御力、社交性、行動力、自己理解と相関した。SCS-SF は不安と過剰同一化に相関を認め、抑うつは研修前の有意な相関はなく、研修後に共通の人間性が相関した。相関したBRS 各項目の平均値が研修後に上昇し、SCS-SF は全項目で過去の研究の平均値より高かった。不安および抑うつが明確にあり、疑い、なしの3 群間では、研修前の不安と資質的レジリエンス(p=0.028)、抑うつと資質的レジリエンス(p=0.024)、不安と獲得的レジリエンス(p=0.005)と相関した。【考察】A 病院の新人看護師は、不安は強いもののセルフ・コンパッションレベルが高かった。不安と抑うつへの研修の効果は認めなかったが、不安と抑うつに相関を示した項目の平均値が研修後に上昇しており、研修の適切さを示した。一方で、研修後に相関がなくなった項目もあり、内容不足が考えられた。またBRS とSCS-SF は、不安との関連を示す研究がなく、尺度の妥当性を検討する必要があった。最後に、前後比較可能な対象者数が少なく、効果を評価するには対象者数を増やす必要がある。