第54回(2023年度)日本看護学会学術集会 横浜

講演情報

口演

口演6群 ポストコロナ社会の看護への示唆~モチベーション~

2023年11月8日(水) 13:15 〜 14:15 第7会場 (G312+G313)

座長:渡邊 輝子

[口演Y-6-1] 重症COVID−19受け入れ病棟において、離職や配置転換を希望しなかった看護師の心理状況に影響を及した要因分析

山下 亮, 角田 直也 (北九州市立八幡病院)

キーワード:COVID-19、離職、配置転換、心理、ストレス耐性

【目的】新興感染症流行による危機的状況下においても、COVID−19対応を理由に離職や配置転換を希望しなかった看護師の心理状況に影響を及ぼす要因を分析する。【方法】本研究は、所属機構の倫理委員会の承認を得て実施した。半構造化面接を行い、得られた結果を文章化し、特徴となる単語をコード化、カテゴリ分類し、分析した。【結果】対象者は、令和元年4月~令和4年11月までに1年以上の重症COVID−19対応を行なったA病棟スタッフ看護師12名。看護師経験は平均4.8年(3年未満:5名、3~5年未満:1名、5~10年未満:5名、10年以上:1名)であり、COVID−19対応を理由に離職や配置転換を希望した看護師は0名であった。逐語録から、COVID−19対応を理由に離職や配置転換を希望しなかった心理的要因として、139コードを分析対象とした。その結果、15のサブカテゴリーから7のカテゴリーが生成された。カテゴリー別には、「支援」「承認」「職務」「組織風土」「人間関係」「環境」「自己成長」が抽出された。【考察】新型ウィルスによるパンデミック・エビデミックにおけるフロントラインで対応にあたる医療者は、ストレスや不安など多くの心理的ディストレスを経験する。このようなストレスフルな状況下であっても、離職や配置転換を希望しなかった看護師の心理的背景には、看護師個々が、職務上の支援や、自らの職務成果における承認を感じられたことが影響している。また、準備期間に余裕がない状況での受け入れは、いわば手探り状態で、臨機応変で柔軟な対応が求められる危機的状況下であった。しかし、そのような状況が反って、A病棟看護師としての使命感を持たせ、協力し支え合い、ポジティブに物事を捉える組織風土を構築することに寄与したと考える。これらには、休暇や賃金といった職場環境への満足感も大きく影響している。危機的状況下では、「支援」「承認」「職務」「組織風土」「人間関係」「環境」「自己成長」など、様々な要因が相互に影響することで、組織としての一体感が生まれ、ストレス耐性を高めることが示唆された。そのため、今回の体験を自己成長の一つとして、肯定的に自らの成長機会と捉えることができていると考える。