第54回(2023年度)日本看護学会学術集会 横浜

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ポスター

ポスター11群 ポストコロナ社会の看護への示唆~看護職の心の働きとその対処①~

Wed. Nov 8, 2023 2:30 PM - 3:30 PM ポスター会場 (G1-G4)

座長:鈴木 美智子

[ポスターY-11-1] 療養病棟における新型コロナウイルス感染拡大を体験した職員の心理的負担からの回復要因

新谷 美智子 (全眞会病院)

Keywords:新型コロナウイルス感染症、療養病棟、感染拡大、心理的負担、回復過程

【目的】療養病棟における新型コロナウイルス感染拡大(以下クラスター)を体験した職員の心理的負担からの回復を明らかにする。【方法】研究デザインは、質的記述的研究を用いた。対象者は、A 療養病棟に勤務する看護職・看護補助者29 名で調査期間は、2022 年9 月12 日~ 9 月21 日とした。調査内容は、「クラスターを体験しての感じたこと・考えたこと」とし、質的統合法(KJ 法)で分析した。A 病院倫理委員会の承認を得て実施し、質問紙の投函をもって研究に同意したとした。【結果】質問紙回収数は、27 名(回収率93.1%)であった。質問紙から取り出されデータ化されたラベルは、「患者さんから感染したとすぐ思った」「感染後すぐに家族内隔離した」「この際、陽性になったら?」「既に自分の思いは、感染よりやるしかないと思った」「死亡退院の時、手を合わせ送ってあげたかった」「コロナに感染して負の感情を抱いていた私に看護部長は『今は治すことだけ考えて』と言われ救われた」「リーダーシップ、チームワークで乗りきれる」等の64 枚であった。それらのラベルの類似性によるグループ編成は5 段階にわたり、その結果6 つのシンボルマーク〈事柄:エッセンス〉に統合された。シンボルマークは、〈感染の衝撃:感染経路の予測〉〈自分や家族への衝撃:死への不安〉〈感染によるストレス反応:誹謗中傷〉〈患者・家族への敬意:死期のケアの重要性〉〈リフレクションの繰り返し:感染対策の重要性〉〈困難を乗り越える強さ:真のチームワーク〉であった。【考察】クラスターを体験した職員は、「患者から感染した」と感染経路を予測し、家族からも隔離され、クラスター対応を続けた。その中で職員の配慮ない言葉に傷つきながらも、専門職業人としての責任感、使命感、倫理観に支えられ、リフレクションを繰り返しながら感染対策と患者・家族のケアの重要性を認識し、危機的状況を乗り越えている。組織は、リーダーシップを発揮しながら職員と情報共有を行い、感染対策の徹底、応援職員の導入、職員・家族への労いの言葉や産業医のカウンセリング等の対策を講じ、クラスターを終息した。以上より、職員が心理的負担から回復した要因は、専門職業人としての自覚、感染予防策の徹底、リーダーシップ、心理的サポートであると考える。それに加え、個人の回復力を組織が支援する体制と目的の共有化は、回復に影響したと考える。