[ポスターY-18-1] 熟練看護師による身体抑制を解除する判断指標に関する研究
Keywords:身体抑制、身体抑制の解除、多職種カンファレンス
【目的】抑制を行っている患者に対する熟練看護師の抑制解除の判断指標を明らかにする。【方法】1.研究デザイン:実態調査研究 2.データ収集方法:無記名自記式質問紙調査を実施した。主な質問内容は、抑制解除の指標としていること、身体抑制チェックシートの活用状況、今後の課題である。3.分析方法:質問項目ごとに単純集計を行った。自由記載は記載内容の類似性、相違性に基づき、カテゴリー化を行った。4.倫理的配慮:本研究は研究依頼する病院スタッフの個人情報の保護に努めた。アンケート依頼時には本研究への参加は自由意志での参加であり、参加しない場合でも不利益を受けないことを記載した依頼書を添付した。【結果】質問紙の回収数は76 人(回収率76%)であった。身体抑制を解除する判断指標として、「患者側背景」と「医療者側背景」に分類された。「医療者側背景」よりも「患者側背景」の方が抑制解除の判断指標として多く活用されていた。「患者側背景」では、「ルート・チューブ類の終了」や「危険行動に至らないだけの理解力がある」など、危険行動に至らない身体面、精神面の状態かどうかを抑制解除の指標として多く活用していた。「医療者側背景」としては、「看護師が頻回に見回りできる」など、スタッフ数や患者に関わる時間の長さなど看護師の負担が指標となっていた。身体抑制チェックリスト内にあるフローチャートの活用状況は、実用性に乏しいなどの理由で全体の4 割が活用していなかった。今後の課題として、看護師の抑制解除のアセスメント能力の向上や多職種カンファレンスの定期的な実施の必要性などをあげていた。【考察】熟練看護師は身体抑制を解除する判断指標として「患者側背景」を重要視しており、特に、危険行動に至らない身体面、精神面の状態かどうかを重要な観察指標としていることがわかった。身体抑制を行う際の基準には、危険行動に至るリスクの高さが報告されているが、解除の基準は、それらのリスクが軽減または消失したと判断した場合であるといえる。本調査結果より、身体抑制フローチャートの活用度の低さや多職種カンファレンスの不十分な実施、看護師の抑制解除のアセスメント能力の不足などの課題が浮き彫りになった。今後、根拠に基づいた個別性のある抑制の解除を行うためには、看護師の抑制解除のアセスメント能力の向上や多職種カンファレンスの実施などの取り組みが必要である。