[ポスターY-3-2] 中規模急性期病院における看護師の心理的安全性の実態調査
―諸変数と個人レベルでの関連分析―
Keywords:心理的安全性、先行要因、結果変数
【目的】中規模急性期病院の看護師に対して、心理的安全性の実態調査を行い、心理的安全性を高めるための方策の一助を得る。【方法】A 病院の看護師に対して、研究の趣旨と倫理的配慮を明記した用紙を事前に配布した。回答方法がモバイル端末を使用したアンケート調査であることから、回答をもって研究に同意を得たと判断した。アンケート項目は、基本属性および心理的安全性について。心理的安全性の先行要因をコミュニケーション能力、セルフ・エフィカシー、職場環境・風土とした。また、結果変数はワークエンゲージメントとし、先行文献をもとに既存または独自の尺度を用い調査した。心理的安全性と基本属性の群間比較にはマンホイット二―U 検定、各尺度間の相関の程度はスピアマン順位相関係数を使用した。また、重回帰分析で心理的安全性に対する影響度を分析した。倫理的配慮については、院内の倫理審査委員会で承認を得て、紙面で個人情報の保護、研究協力で生じる不利益はないことを示した。【結果】研究対象277 名にアンケートを配布し174 名を有効回答とした。心理的安全性の基本属性では、30 歳代が40 歳代と比較して(p<0.05)有意に低かった。そのほか、心理的安全性とすべての先行要因と結果変数に対して相関を認めたが、相関係数が最も高かったのは職場環境・風土であった。また、重回帰分析においては、看護師経験年数、職場環境・風土、セルフ・エフィカシーが順に高い影響を及ぼす要素であった。【考察】本研究では、心理的安全性に対して、先行文献で示される先行要因と結果変数で何らかの関連があることが確認された。中でも、最も正の相関を認めたのは組織環境・風土であり、対人リスクの低い組織づくりが心理的安全性にとって最も重要であることが見出せた。影響要素では、看護師経験年数やセルフ・エフィカシーという個人要因が抽出されている。上司や先輩看護師との信頼関係の構築に努める新人看護師や若手看護師にとって、対人リスクが与える影響は、メンタルヘルスの変調や離職意図と関連すると考えられる。以上から、上司との信頼関係の構築や、個人のワークライフバランスを考慮したキャリア支援の重要性が示唆された。本研究の結果を踏まえ、組織の心理的安全性を高めることで、医療安全文化の醸成と個人の仕事に対するエンゲージメントの向上に貢献していきたい。