第54回(2023年度)日本看護学会学術集会 横浜

講演情報

ポスター

ポスター39群 倫理

2023年11月9日(木) 13:15 〜 14:15 ポスター会場 (G1-G4)

座長:平井 和恵

[ポスターY-39-2] 急性期病院における終末期がん患者の看護に対する看護師の倫理的ジレンマ

―がん看護経験年数に焦点を当てて―

高橋 洋介, 青木 李加, 鳴海 有希, 林 未来子, 佐藤 茂, 松本 美紀 (斗南病院)

キーワード:急性期、終末期、倫理的ジレンマ

【目的】急性期病院における終末期がん患者の看護に対する倫理的ジレンマを明確化し看護師の精神的・倫理的サポートへの一助とする。【方法】終末期がん患者の看護における看護師の倫理的ジレンマ尺度(全7 因子58 項目、得点が高いほど倫理的ジレンマが認められる)を使用し調査。倫理的ジレンマに影響する要因としてがん看護経験年数を挙げ、結果を一元配置分散分析と多重比較にて分析した。本研究は無記名自記式質問紙を使用し匿名性に配慮、質問紙の回答をもって研究への同意を得たこととした。【結果】A 病院病棟所属の看護師に調査を実施し139 名の回答が得られ、がん看護経験年数別内訳は5 年未満53 名、5 ~ 10 年未満40 名、10 ~20 年未満28 名、20 年以上18 名であった。がん看護経験年数別の比較では因子全体で有意差が認められ(p<.01)、10 ~20 年未満の得点が最も高かった。各因子別比較では第2 因子(意思決定支援の看護が見いだせない)で5 年未満の得点が有意に高く、第4 因子(医師と意見が食い違う)・第5 因子(患者状況よりも化学療法や延命処置が優先される)・第6 因子(患者が置き去りで治療が進む)は10 ~ 20 年未満の得点が有意に高かった。【考察】5 年未満は第2 因子で有意に得点が高く、経験不足により患者ニーズを把握し看護介入を行うことに困難感を抱えていると考える。がん看護経験を経るにつれ第2 因子の得点は低くなる傾向にあるため、A 病院が導入するPNS により若年看護師が先輩看護師と行動を共にすることで先輩看護師の経験を参考に自身の経験不足を補うことでジレンマ解消に繋がると考えられ、PNS マインドの醸成と継続の必要性が示唆された。第4 ~ 6 因子では10 ~ 20 年未満の得点が有意に高く、がん看護経験を積むことで患者の課題を捉える能力が培われ患者の思いに寄り添う看護に繋がるものと考えられるが、自身の看護観が醸成される中で実際に患者の置かれる状況を目の当たりにし現実と看護観の間に乖離を生じジレンマを抱くのではないかと推察される。また、経験を積むことで若年看護師のフォローや医師と意見交換の機会が増えることで負担感を生じ、ジレンマを抱えやすい状況となっている可能性も考えられる。中堅看護師が抱くジレンマを表出できる環境を整備することで、自身の行う日々の看護実践への自信構築等を期待できジレンマ解消に繋がるのではないかと考える。