第54回(2023年度)日本看護学会学術集会 横浜

Presentation information

ポスター

ポスター39群 倫理

Thu. Nov 9, 2023 1:15 PM - 2:15 PM ポスター会場 (G1-G4)

座長:平井 和恵

[ポスターY-39-5] A 病院看護師の倫理的課題に基づく人材育成の組織的取り組み(第1報)

―事例集からの倫理的課題の傾向―

田口 里美1, 谷口 好美1, 岩佐 直美1, 砂畑 文子1, 石腰 由美1, 福澤 郁予1, 冨田 和代1, 橋本 麻由里2, 古澤 幸江2, 安田 みき2 (1.JA 岐阜厚生連飛騨医療センター久美愛厚生病院, 2.岐阜県立看護大学)

Keywords:事例集、倫理的課題、意思決定支援、人材育成

【目的】A 病院では、2013 年より各部署で臨床倫理ネットワーク日本の「臨床倫理シート」を活用した事例検討を実施し、それらをまとめた事例集を配置している。しかし倫理的な課題に直面した際に活用できていない現状があった。本研究の第1報の目的は、倫理的感性を育成し組織的に倫理的課題への対応を支援するため、事例集から看護職が抱える倫理的課題の傾向を把握することである。【方法】2017 ~ 2020 年に検討した52 事例の記述内容から、事例概要や課題に感じた点などを抽出する。全事例のデータを統合し、倫理的課題を感じた事例の特徴、および各事例の展開において看護職が課題に感じた点を内容の類似性に従って質的に分析する。事例集は個人が特定されないように匿名化し、部署長にプライバシー保護に努める旨を説明し事例活用の同意を得た。本研究はA 病院看護部倫理検討会及びB 看護大学研究倫理委員会の承認を得た。【結果】倫理的課題を感じた事例の特徴は、〈高齢患者や慢性疾患患者の療養方針や療養場所の意思決定〉〈認知機能低下を伴う高齢患者の血液透析、栄養経路、排泄方法などの選択やサービス提供〉〈高齢患者の経口摂取や血液透析など療養方針や治療の継続〉〈高齢患者の看取りやサービス利用の意思決定〉〈健診場面や患者との電話でのやりとり〉〈医療的ケアを必要とする患者や意思疎通困難な高齢患者〉等11 のカテゴリーに分類された。各事例の展開において看護職が課題に感じたことは176 の記述があり、分析の結果〈意思の尊重・意思決定支援〉関係者間の問題に起因する〈医療者の適切な連携・協働〉最善の看護や実施すべき看護に関する〈よりよい看護の提供〉〈ジレンマ〉〈人権尊重〉〈道徳的課題〉の6 つの大カテゴリーに分類された。【考察】事例集からの倫理的課題の傾向として、看護職が課題に感じたことで最も多かったのが、意思の尊重・意思決定支援に関する内容であり、本人・家族の思いを聴くことの難しさや、関係者の思いの違いに悩む看護職の姿が示されていた。また、医療者の適切な連携・協働に関するものなど、多職種や関係施設との連携のための環境づくりが必要であると考えられた。これらを踏まえ、倫理的な問題を感じた際に関係者が繰り返し話し合うことが必要であり、組織的な人材育成による取り組みや、看護実践のためのマネジメントによる実践の体制づくりが必要であると考えられた。