[ポスターY-48-3] 若手看護師に対するせん妄ケアシミュレーション教育の効果
キーワード:若手看護師、せん妄ケア、シミュレーション教育
【目的】若手看護師はせん妄患者のケアに対する困難感や不安を抱いていると言われている。近年シミュレーション教育への関心が高まっており、今後のせん妄ケア教育の方略について示唆を得るため、若手看護師へのせん妄ケアシミュレーション教育の効果を検証する。【方法】A病院B病棟に勤務する若手看護師を対象者とし、過活動型せん妄患者の事例をもとに作成したせん妄シミュレーション教育を実施した。対象者には、シミュレーション前後に研究者が作成した調査票を用いてその効果を比較した。効果検証のための調査票は、25項目のせん妄の基本的知識に関する設問及び、9項目のせん妄ケアへの自信(VisualAnaloguScale:VAS)の2つで構成した。分析手法は、せん妄の基本的知識は正答数の変化、せん妄ケアへの自信はVASをシミュレーション前後でウィルコクソンの符号付順位検定を用いた。統計解析にはSPSSⓇを用い有意水準は5%とした。倫理的配慮として、調査用紙は個人が特定されないようID番号にて管理した。【結果】対象者は10名(女性9名)で、看護師経験年数の平均(標準偏差)は2.4±1.0年であった。せん妄の基本的知識の正答数はシミュレーション実施前後で有意差はなかった(中央値 [IQR]20[20-24]vs23[22-24],p=0.07)。せん妄ケアへの自信(VAS)は、シミュレーション後にせん妄リスク因子のアセスメント(中央値 [IQR]5.1[3.0-5.1]vs6.3[6.0-7.1], p=0.02)、薬剤投与(中央値 [IQR]4.3[2.3-5.0]vs4.9[4.7-5.3], p=0.02)の項目で有意差がみられた。【考察】シミュレーション教育の基盤には、経験的学習理論が存在し、学習者は具体的経験などを基に省察を行うことで学習が促進されることが報告されている。本研究では、せん妄の基本的知識の正答数は、シミュレーション前後で有意差はなかった。一方、シミュレーションにより、若手看護師のせん妄リスク因子のアセスメントや薬剤投与などのせん妄を発症した患者の直接的な対応への自信が向上していた。せん妄シミュレーションによる経験的学習がせん妄患者への多様な対応への気付きを生み、省察を促していることが示唆された。今後は、シミュレーションにより得られた知識を別の場面でも応用可能か検討する必要がある。