[ポスターY-7-4] 隔離病棟入院中の重度発達遅滞のある患者に対する排泄行動再獲得の関わりの効果
キーワード:発達障害、発達遅滞、排泄ケア、看護カンファレンス、隔離病棟
【目的】発達障害は「なんらかの要因によって生まれつき脳の発達に障害」がある状態であり、個人差が大きいため「その人に合った治療や暮らし方を工夫することが重要」といわれる。本研究の目的は、隔離病棟入院中の重度発達遅滞をもつ患者の排泄に関して、看護師の関わりを振り返り、その効果を明らかにすることである。【方法】事例研究。入院中のカルテから看護師の記録を中心にデータに起こし、後方視的に評価した。患者とその家族へ、研究の趣旨、研究参加は任意であること、データの匿名性の保証などについて丁寧に説明し、同意を得た。なお、本研究はA 大学倫理審査委員会の審査を受け承認を得ている。【結果】入院患者A 氏は20 歳代男性、IQ10~12 程度の重度発達遅滞があり入院前は作業所に通所していた。自宅では一部介助が必要なものの排泄行動は概ね自立していたが、身体疾患による加療、その後のCOVID-19 感染により、隔離病棟転棟時は尿失禁、便失禁が見られていた。看護師は当初A 氏のおむつ使用が当たり前と思っていたが、時折尿意の訴えがあることに気づき、排泄行動の再獲得に向けた関わりを行った。看護師はA 氏のナースコールと尿意を紐付け、適時トイレ誘導を行った。ナースコールや壁に絵をつけ、視覚的にも尿意とナースコールを紐付けられるよう工夫した。また、看護師はカンファレンスを通じてA 氏がナースコールを押せた時には褒める関わりを継続した。その結果、尿意を訴えられるようになり、20 日後より尿失禁回数が減少した。【考察】先行文献では、効果的な排泄ケアには対象の排泄パターンの把握や再獲得、適切なトイレ誘導が有効であり、対象に応じた機能訓練、ケアの全過程で温かい看護を提供することが重要と述べられている。今回看護師は、患者の排泄に関し前情報のみにとらわれず、対象の状態や変化をアセスメントし、カンファレンスを行い統一して関わりを行った。A 氏が尿意を訴えるツールとしてナースコールを使用し、絵などを用いて遊び感覚でボタンを押せるように関わったことは効果的であった。また隔離病棟の特性として、個室の寂しさ、家族が面会できないこと、PPE 着用のため看護師が頻回に訪室できないことなどがある。看護師が一貫して温かく接したこと、尿意を訴えられた際に褒めた関わりは、隔離中のA 氏の自尊心を満たすと共に安心感をもたらし、重要かつ効果的であったと考える。