第54回(2023年度)日本看護学会学術集会 横浜

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2022年度日本看護協会調査研究報告

2022年度日本看護協会調査研究報告

Thu. Nov 9, 2023 9:00 AM - 10:00 AM 第4会場 (G301+G302)

座長:吉村 浩美

登壇者:世宮 悠子・甲斐 貴雅・堀川 尚子

[RR1-1] コロナ禍における保健師活動の実態及び今後必要な取り組み

~令和4 年度厚生労働省先駆的保健活動交流推進事業保健師の活動基盤に関する基礎調査結果より~

世宮 悠子 (日本看護協会健康政策部保健師課)

【背景・目的】
 本調査は、平成21 年度より開始し、平成22 年度以降4 年毎に実施している。
 5 回目となる今回は、新型コロナウイルス感染拡大等により大きく影響を受けた保健師業務、及び保健師の活動基盤となる人材確保・育成、就業継続等の実態把握と課題の整理、対応策の検討を行い、今後の政策提言等に反映するための基礎データとすることを目的とした。
【方法】
 調査実施期間は令和4 年9 月1 日~ 30 日、保健師として就業している全国の保健師(推計56,000人)を対象にWeb 調査(無記名)にて実施した。
【結果】
 有効回答件数は19,994 件(厚生労働省令和2 年衛生行政報告例 就業保健師の実人数55,595人に占める割合は36.0%)。
 新型コロナウイルス感染症対応については、約8 割の保健師に従事経験があり、うち約6 割が労働環境が悪化したと回答していた。特に、行政領域では25.1% の保健師が最長80 時間以上の時間外勤務を行っていた。有事の体制整備のために今後必要な取り組みとしては、「緊急時に必要な人員の確保・活用のための体制づくり」(46.6%)、「保健師の増員」(31.0%)が多かった。
 人材育成・現任教育体制については、中堅期研修の受講割合は研修対象者の約6 割、管理期では約5 割であった。未受講理由は「研修自体がない」が3 ~ 4 割と最も多く、「業務が多忙で参加できない」が約2 割であった。一方、統括保健師がいる組織では、いない組織に比べ全ての人材育成・現任教育に関する項目の実施割合が高かった。
 就業継続意向については、約4 割が離職を検討しており、その理由としては「業務に関する精神的負担が大きい」(30.9%)、「自分の適性・能力への不安」(25.9%)が多かった。また、就業継続を支援するための相談の場・機会がある者に比べ、これらがない者は、就業継続希望者の割合が約3 割低かった。
【考察】
 調査結果から、新型コロナウイルス感染症の影響により、特に行政領域で保健師の労働環境が悪化しており、有事に備えた平時からの支援体制の整備や、人材確保の必要性が示唆された。
 中堅期・管理期研修については、研修自体の開催に加え、研修に参加できるような配慮が求められる。また、統括保健師は、保健師の人材育成・現任教育体制の整備に貢献していると考えられ、特に統括保健師の配置割合が低い小規模市町村における配置推進の必要性が示唆された。
 就業継続の視点からも、保健師の現任教育の強化や、労働環境整備の重要性が一層増していると考えられる。