第54回(2023年度)日本看護学会学術集会 横浜

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2022年度日本看護協会調査研究報告

2022年度日本看護協会調査研究報告

Thu. Nov 9, 2023 9:00 AM - 10:00 AM 第4会場 (G301+G302)

座長:吉村 浩美

登壇者:世宮 悠子・甲斐 貴雅・堀川 尚子

[RR1-2] 訪問看護における労働環境及び多様化するニーズへの対応に向けた取り組みについて

~ 2024 年度診療報酬・介護報酬改定等に向けた訪問看護実態調査より~

甲斐 貴雅 (日本看護協会医療政策部在宅看護課)

【背景】
 医療と介護の複合ニーズを抱える在宅療養者を支えるため、看護職が専門性を発揮しながら連携してサービス提供していくことや、限りある人材の中で質の高いケアを提供するため業務効率化や職員の負担軽減に向けた体制整備が求められる。
【目的】
 訪問看護における労働環境やサービス提供等に関する実態(夜間・休日の勤務体制、ICT 導入による業務効率化の取り組み、専門性の高い看護師からの支援、保険外サービスの提供状況等)を明らかにし政策提言に活用する。
【方法】
 日本看護協会研究倫理委員会の承認を得て、2022 年9 月21 日~ 10 月31 日の期間、全国の訪問看護事業所(以下、事業所)の中から都道府県を単位として層化無作為抽出した6,000 事業所を対象にweb 調査を実施した。
【結果】
 有効回答数は1,879 事業所(回収率31.3%)だった。看護職員の主な夜間・休日の勤務体制(複数回答)は「オンコール(90.6%)」が最も多かった。夜勤・休日対応に関する課題は「看護職員の精神的・身体的負担(83.5%)」が最も多かったが、「他事業所とオンコール対応のシェアができない(15.1%)」と回答した事業所もあり、「他事業所とオンコール対応のシェアができない」についての事業所規模別の結果では20 人未満の事業所で課題に挙げる割合が高かった。
 ICT 導入による業務効率化の取り組みは「看護記録システム・ソフトの導入(75.5%)」「スマートフォン・タブレットを用いた記録・報告(62.8%)」と回答した事業所が多かったが、8 割以上の事業所が「バイタルセンサー、IoT 機器等を活用した健康観察」等の実施を予定していなかった。
 事業所外の認定看護師あるいは専門看護師からの支援や助言については、いずれのケアに関しても5 ~ 6 割の事業所が「受けていない」と回答したが、「小児(医療的ケア児)への対応(44.1%)」を除き約6 割の事業所が今後支援や助言を受けたいと意向を示した。
 保険外サービスを実施している事業所は、「地域の訪問看護事業者や医療職・介護職への支援」が30.9%(581 事業所)、「利用者家族・介護者・地域住民への相談窓口」が30.7%(577 事業所)で、そのうち財源を「全て事業所の負担」と回答した事業所はそれぞれ51.5%、61.7% だった。
【考察】
 複数事業所でのオンコール対応のシェアやICT を活用した業務効率化等により看護職の負担軽減を図り、専門性の高い看護師の更なる活用を含め多様化・複雑化する地域のニーズに対応し続けられる体制の構築が必要と考えられた。