第54回(2023年度)日本看護学会学術集会 横浜

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2022年度日本看護協会調査研究報告

2022年度日本看護協会調査研究報告

Thu. Nov 9, 2023 9:00 AM - 10:00 AM 第4会場 (G301+G302)

座長:吉村 浩美

登壇者:世宮 悠子・甲斐 貴雅・堀川 尚子

[RR1-3] 多様な在宅療養ニーズに応える看護小規模多機能型居宅介護

堀川 尚子 (日本看護協会医療政策部在宅看護課専門職)

【背景】
 看護小規模多機能型居宅介護(看多機)は、中重度要介護者の在宅療養を支援する介護保険サービスである。事業所数は年々増加しているが、看多機がまだ1か所もない市町村も相当数に上る。看多機の機能について関係職種や自治体の理解を促進し、サービス提供体制を質・量ともに強化していく方策が求められる。
【目的】
 看多機の利用者の状態やサービス提供の状況、看取り・重度者対応等について調査を実施し、看多機の機能・役割を検証する。
【方法】
 令和4 年度厚生労働省老人保健健康増進等事業「看護小規模多機能型居宅介護の普及等に関する調査研究事業」により、2022 年10 月~ 11 月に看多機事業所へのweb アンケート調査(悉皆)を実施し、事業所の体制や利用者の状態像、サービス利用状況等について回答を依頼した。調査は日本看護協会研究倫理委員会の承認を得て実施した。
【結果】
 有効回収数は293 事業所(有効回収率35.6%)であり、2,338 人分の利用者データについて回答を得た。
 要介護度の分布では、「要介護度3」以上の利用者が68.4% であった。主傷病名は「認知症」が20.9% で最も多く、次いで「脳卒中」が18.0%、「心臓病」が7.4% など。ターミナル期に該当する利用者は6.6% であった。
 要介護度が高いほど「泊まり」の利用回数が多い傾向にあり、要介護1 では平均3.2 回/月に対し、要介護5 では平均 9.4 回/月であった。ターミナル期の利用者の「泊まり」月平均回数は11.5 回だが、「泊まり」利用回数の分布は、「月30 回以上」が21.4% に対し、「月0 回」が27.3%となっていた。また、「訪問看護」利用回数の分布は「月12 回以上」が22.0% に対し、「月0 回」が33.1% であった。ターミナル期の利用者の看多機サービス利用において、事業所内での看取りに向け泊まりを集中的に利用するケースと、自宅での看取りに向け訪問看護等を中心に利用するケースがあることが推察された。
【考察】
 看多機は、複数の医療的ケアを要する重度の方、看取り期にある方、認知症の方など幅広い利用者を受け入れ、多様な医療・介護ニーズを有する利用者の状態改善・重度化防止にも効果を挙げている現状が示された。日々の状態変化に柔軟に対応し、自宅や事業所内での看取りを実現する看多機の役割について、自治体や関係機関への周知普及を進め、設置促進を図っていく必要がある。