第54回(2023年度)日本看護学会学術集会 横浜

講演情報

シンポジウム

シンポジウム6 現場のデータが未来を変える
~看護政策推進のためのエビデンス構築をめざして~

2023年11月8日(水) 13:15 〜 14:45 第1会場 (G7+G8)

座長:秋山 智弥

講師:中山 健夫・草野 とし子・吉田 学

[SY6-1] エビデンスから意思決定へ:臨床と政策の両方の視点から

中山 健夫 (京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻健康情報学分野教授)

【抄録】
 1991 年、臨床疫学者Guyatt による根拠に基づく医療(evidence-based medicine: EBM)の提案以降、保健医療の意思決定に疫学研究から得られたエビデンス(evidence)が重視されるようになり、その領域は臨床実践(evidence-based clinical practice : EBCP)から政策(evidence-based policy making: EBPM)へ拡大した。エビデンスに基づくアプローチと共に、人間集団を対象とする科学的な手法である疫学の意義は30 年程で急速に高まった。オタワ大学のSpasoff は1999 年に、伝統的な疫学研究を「病因疫学(etiologic epidemiology)」、政策選択の根拠の提示や評価を目的とする領域を「政策疫学(policy epidemiology)」と名づけて対比し、後者の発展の必要性を唱えた。介入(予防・治療)の有効性のエビデンスとしては介入研究が重視されるが、各種データベースの発展により、観察研究の可能性が広がり、コホート研究による知見も増えている。臨床・政策課題は介入の有効性だけでなく、事象の頻度、リスク因子、経済評価など多岐に渡り、研究手法としては量的研究に加えて、質的研究や混合研究法も大きく発展している。講演では、これらのエビデンス創出、エビデンスに基づく意思決定の視点から、看護領域での取り組みへの期待を述べたい。