第62回日本油化学会年会

学会賞等受賞講演

  • 学会賞は油化学または油化学工業に顕著な功績のあった研究成果に授与する当学会で最も権威のある賞です。工業技術賞は油化学工業における顕著な技術成果に授与し,そして進歩賞は若手の優秀な研究成果に授与します。
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<学会賞>

放射光X線回折法による油脂結晶構造の解明
および産業利用のための基礎物性研究

上野 聡
広島大学大学院統合生命科学研究科

 

<受賞理由>
食用油脂における油脂の結晶化やゲル化を伴う界面変化を把握することに 世界に先駆けて成功した本研究成果に授与することとしました。上野氏は、本解析によって、従来の平均場の観察では得られない局所の微細構造変化を捉えることに成功して、乳化製品の安定性等を考える上で重要な知見を発表しています。
<学会賞>

水産脂溶性成分の有効利用を目指した
分子栄養学的研究

細川 雅史
北海道大学大学院水産科学研究院
<受賞理由>
褐藻類由来のフコキサンチンの非感染性疾患予防機能に着目し、その生体内代謝を明らかにして慢性炎症を抑制するメカニズムを突きとめた本成果に授与することにしました。細川氏はこの他にも、海洋性カロテノイドの有効性、さらにはEPAやDHA、DPAn-3といった水産物に特徴的に含まれるn-3系多価不飽和脂肪酸の機能を、生体内代謝の面から明らかにして、食品機能の有効性確保に役立つ成果を発表しており、学会賞にふさわしいと判断しました。
<工業技術賞>

化粧品・化粧品原料のためのバイオミメティック触覚センシングシステムの開発

野々村 美宗
山形大学
野村 修平
株式会社トリニティーラボ
齋藤 庸賀
東京都立産業技術研究センター
<受賞理由>
ヒトの感覚に依存していた化粧品の塗り心地やテクスチャー評価を定量化し、化粧品製剤の評価を可能としました。そして本成果は、界面科学に裏打ちされた緻密なモデルから成り立っており、その評価結果の妥当性は種々製剤系で確認されていることから、授与にふさわしいと判断しました。
<進歩賞>

水産油脂の食品機能および未利用水産資源
の有効利用に関する研究

細見 亮太
関西大学 化学生命工学部
<受賞理由>
水産油脂の加工法を開拓し、未だ機能が明確にされていないグリセロリン脂質の有効性を明らかにして、食品科学および栄養学の分野に大きな進歩をもたらす可能性を示した本研究に授与することとしました。ホタテガイ内臓からの有効成分の抽出法は、食品規格を満たす油脂開発をパイロットプラントで成功しており、実用化が期待できます。
<進歩賞>

天然物由来酵素を用いた共役脂肪酸合成法
の確立と難治性がん克服に向けた
新規治療戦略の開発

本間 太郎
帝京大学 薬学部
<受賞理由>
天然物由来酵素を用いた共役脂肪酸合成法を確立し、難治性がん克服に向けた可能性を提案した本研究に授与することとしました。本間氏が見出した共役脂肪酸の合成法は,難治性がん克服作用のある成分を大量生産できる可能性をもち、広範な医療分野の進展に貢献することが期待できます。