第56回日本作業療法学会

Presentation information

学会長講演

[A-4] 学会長講演

Fri. Sep 16, 2022 10:00 AM - 10:50 AM 第1会場 (メインホール)

座長:長尾 徹(神戸大学生命・医学系保健学域大学院保健学研究科)

[F-1] 学会長講演 個人の幸せの追求は持続可能な社会を創る

講師:村田 和香

 作業療法はどんな時でも人の営みを焦点とし、個人の人生の質を大切に楽しさや喜びを作り出すプロフェッショナルとして存在すると信じている。そのうえで、本学会のテーマは「持続可能な社会を創る作業療法」とした。
 持続可能性サスティナビリティの領域は広範であり、自然環境や社会経済システムに関わる多様な問題が複雑に絡み合っている。サスティナビリティの実現には、環境問題の解決という視点だけではなく、経済・社会問題も含めた相対的な問題解決のアプローチが必要となる。持続可能な開発目標(SDGs)は、2015年9月の国連サミットで採択された2016年から2030年までの国際目標であり、17のGoalsで構成されている。
 本学会でサスティナビリティをテーマとして掲げたのは、作業療法士がもっとサスティナビリティのために、新たに、あるいは、今以上に何かやるべきと提案しているわけではない。私たちは普通に職務を全うしているならば、対象となる方たちの個別性や多様性を認め、大切にしているはずである。そのことの重要性を認識して欲しいということだ。たとえば、Goal3「すべての人に健康と幸福を」は協会でうたっている作業療法の定義にある目的と同じだ。SDGsは他にもGoal4「質の高い教育をみんなに」、Goal10「ジェンダー平等を実現しよう」、Goal8「働きがいも経済成長も」、Goal10「ヒトや国の不平等をなくそう」、Goal11「住み続けられるまちづくりを」、そして、Goal16「平和と公正をすべての人に」で、私たち作業療法士は多くの任務を果たしている。いえ、SDGsすべてに関わっているといっても過言ではない。だからこそ、作業療法士はもっと遠慮せずに、堂々と頑張っていることを声に出してよいし、社会に認めて欲しいと思ったためである。
 私たちの先達が行ってきたことはSDGsを達成する一助となっていたことを、これまでの作業療法の功績をたたえつつ、これを機に明らかにしたい。そして、これからの作業療法士の活躍もSDGsに貢献することを示したい。作業療法への理解は、人々の健康に加え、SDGsの達成や経済成長につながる。全ての人のあらゆる場面で起こりうる変化や対立、そして多様性を柔軟に対応できる人材が今後も育ってほしい。個人の幸せを追求するお手伝いは、持続可能な社会を作り出すのだから。そして、そのために、Goal17「パートナーシップで目標を達成しよう」については、協会に期待するものである。