第56回日本作業療法学会

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基調講演

[A-6] 基調講演2

Sat. Sep 17, 2022 10:30 AM - 12:00 PM 第1会場 (メインホール)

座長:宇田 薫(医療法人おもと会)

[F-3] 基調講演2 ケアとジェンダー-家族社会学の視点から-

講師:木脇 奈智子 (医療法人おもと会)

このたびは、日本作業療法士学会に招聘いただき、誠にありがたく御礼申し上げます。
筆者が1980年代にお茶の水女子大学大学院でジェンダー研究を始めた時、講座名は「婦人問題」(原ひろ子教授)であり、婦人参政権運動を彷彿とさせる名称でした。
その後、男女雇用機会均等法(1986)や育児介護休業法(1999)、男女共同参画社会基本法(1999)などの法整備がされてまいりました。近年ではSDGsにおける5番目の項目に「ジェンダー平等」が入り、ジェンダーは現在少しずつ注目されてきているように感じます。母校のお茶の水女子大学には、体が男性で心が女性であるトランスジェンダーの女性も入学することが可能になりました。これは大きな進化ではありますが、まだ課題も多くございます。
世界経済フォーラム(WEF)は、「The Global Gender GapReport 2021」で、各国における男女格差を測るジェンダーギャップ指数(Gender Gap Index:GGI)を発表しました。この指数は、「経済」「政治」「教育」「健康」の4つの分野のデータから作成され、2021年の日本の総合スコアは0.656、順位は156か国中120位でした。先進国の中で最低レベル、アジア諸国の中で韓国や中国、ASEAN諸国より低い結果となりました。
日本の女性は「健康」「教育」の指数は高いけれども「政治」「経済」には世界各国と大きな格差があります。これは我が国の今後の課題といえるでしょう。賃金の男女格差については、国連からも複数回指摘されているところです。経済格差と背中合わせに、家事育児介護などの無償労働を主に女性が引き受けていること、共働きであってもその構造は変わらないこと、仕事と家事・育児の二重労働のために昇進したくない女性や子どもを産み控える女性が増えていること、これらの現象が少子化とリンクしていることなどがあげられます。
諸外国はどのように仕事と子育てを両立しているのでしょうか。また、どのような理念をもって次世代を育てているのでしょうか。当日は、筆者らが行ったアジアおよび北欧での調査からケアとジェンダーの問題を比較し、問題提起をしたいと思います。