第56回日本作業療法学会

講演情報

教育講演

[A-9] 教育講演2

2022年9月16日(金) 13:00 〜 14:30 第2会場 (Annex1)

座長:藤原 瑞穂(神戸学院大学総合リハビリテーション学部)

[F-6] 教育講演2 教育 2030年に活躍できるOTのために

講師:佐藤 善久 (東北福祉大学健康科学部 リハビリテーション学科)

 教育者としてOT教育を考えるときには、どのような人材を育成するかという教育目標と、その教育方法及び効果を確認する教育評価を意識する。学会長より頂いた「2030年に活躍できるOTのために」という課題を、本学会テーマである「持続可能な社会を創る作業療法」を担う人材の育成という視点で考えてみたい。
 先ず2030年に活躍するOT養成教育を考える際に2030年をイメージする必要がある。我々が経験した過去10数年間の変化や出来事は、事前に予測不能な状況が続いてきた。SNSやICT等の発展による情報の拡大、地震や豪雨など自然災害による被害、戦争の勃発や新型ウイルス感染症拡大による社会の激変など、誰がこの事態を予想できただろうか。こうした激変の時代をアメリカの軍事用語を用いVUCA(Volatile, Uncertain, Complex, ambiguous)の時代と表する人もいる。過去の経験からも2030年のOTを取り巻く環境(文脈)や役割は今とは大きく変わることだけは予想できる。教員の多くが、過去に東日本大震災や感染症拡大下で教育目標や方法を修正し、工夫をしながら教育を続けてきた。そこには、明確な答えのなく、教育に携わる者が粘り強くより良い教育を模索し続けてきたことに他ならない。こうしたVUCA時代の柔軟な対応は、今後も求められる教育の姿勢の1つであろう。
 子どもの教育の指針として、様々な国際機関(UNESCO、OECD、WFOTなど)や各国の教育機関が、教育の枠組みや求める姿・資質を示してきた。その一つにキー・コンピテンシーの概念(2006年)を提唱したOECD(経済協力開発機構)は、2015年にOECD Future of Education and Skills2030プロジェクトを始動させ「2030 年に望まれる社会のビジョン」と、「そのビジョンを実現する主体として求められる生徒像とコンピテンシー」について議論を重ね、その成果物としてコンセプトノート(OECD Learning Compass2030)(2019年)を公表した。このLearning Compass(学びの羅針盤)2030は教育の望ましい未来像を描き、進化し続ける学習者の学習の枠組みを示したものであり、VUCA時代のOT教育にも共通するビジョンや求められる資質を述べている。
 本講演では、Learning Compass2030が示した学習の枠組みを紹介しながら、2030年に活躍するOTのための教育について教育目標や求められる資質、教育方法・機会、及びその評価について考えてみたい。