第56回日本作業療法学会

講演情報

教育講演

[A-10] 教育講演3

2022年9月17日(土) 16:20 〜 17:50 第1会場 (メインホール)

座長:柴田 八衣子(兵庫県立リハビリテーション中央病院)

[F-7] 教育講演3 AIとロボットの活用に向けて

講師:小林 隆司 (岡山医療専門職大学 健康科学部)

 ロボットの一番簡単な定義は、「センサー、制御装置、出力装置の3つの要素を持つ機械」である。センサーには、カメラやマイク、タッチセンサー、ジャイロセンサー、筋電センサー、脳波センサーなどがある。制御装置は、コンピューターとプログロムである。そして出力装置には、電動モーターやスピーカー、LEDライト、映像機器、電気刺激装置などがある。このような要素を組み合わせた、様々なリハビリテーション機器が開発され、それらを用いたリハビリテーションはRobot-assisted rehabilitation等と称され、今後ますます私たちの臨床に導入されると思われる。まずはロボットを用いた作業療法について、自験例も含めながら考察を加えていく。
 ロボットの機能を飛躍的に向上させるものとして人工知能(AI)が注目されている。レイ・カーツワイルは、AIが人類の知性を超える転換点、つまりシンギュラリティが2045年に到来すると予測している。だが現在のところ、シンギュラリティの実現には、著しい技術的ブレイクスルーが必要と考えられている。例えば、現在のAIは特化型AIと言われ、AIプログラムであるアルファ碁は、囲碁に特化すればプロ棋士に勝つレベルにあっても、その能力を他のタスクに転移させることは難しい。もし仮に対局中に火事が起きたとしても、アルファ碁はどうしたらよいか判断できないだろう。人間レベルの知性とは、身につけた思考力を、将来遭遇する課題に対して柔軟に活用できるということで、そういったことのできる汎用的AIはまだ実現していない。また、人間は過去の身体的経験のメタファーを通じて、抽象的概念を理解することができる(ものを握る意味での把握→物事を理解する意味での把握)が、AIは人間のような身体を持たないので、そのような方法で人間レベルの知性を獲得することはできないと言われている。講演の後半では、AI時代の作業療法における人間の果たす役割について考えていきたい。
 なお当日の講演では、引用文献について言及する時間がないため、関心のある方は、リサーチマップ(https://researchmap.jp/ot-kobayashi/)の資料公開ページをご参照ください。