第56回日本作業療法学会

講演情報

専門作業療法士セミナー

[B-1] 専門作業療法士セミナー10(福祉用具)

2022年9月17日(土) 09:00 〜 10:00 第4会場 (RoomA)

[G-10] 専門作業療法士セミナー10(福祉用具):持続可能な社会を創るための福祉用具分野の作業療法

松本 琢麿1, 松元 義彦2,鴨下賢一3
 
(1.神奈川県総合リハビリテーションセンター, 2.鹿児島赤十字病院, 3.株式会社 児童発達支援協会 リハビリ発達支援ルーム かもん)

我が国は団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に,重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう,医療・介護・予防・住まい生活支援が包括的に確保される体制(地域包括ケアシステム)の構築を実現することを目標としています.近年,家族の介護力低下や介護人材の不足が叫ばれるなか,高齢者や障害児者が住まいで暮らすためには,生活自立度を維持向上し介護負担を軽減させるような環境調整を必要としています.そして日常生活や社会参加を促すことができる作業療法士(OT)が,地域包括ケアに貢献できる専門職として注目されています.
 その一方,時代に応じた変化は目まぐるしく,私たちを取り巻く生活用具や住環境,テクノロジー等は発展進化しています.そのため昨年度の本セミナーでは,『国民生活に合わせた生活支援用具や住環境整備』をテーマとして,(1)自助
具や生活便利品など生活支援用具,(2)福祉用具や住まいなど環境整備,(3)ICT機器,IoT製品などテクノロジーの3つの観点において,
1) 対象者のニーズにあった生活支援方法が選択できるよう,情報や支援技術を備えておくこと
2) 時代背景や文化,国民生活の変化に合わせた生活支援用具の作製や開発はOTの責務
3)「 〜ができない」ではなく,「〜ができる」の視点をもち,成功体験を増やしながら「できること」の確認作業
4) 本人が「できること」を知り,エンパワメントを持ち自立への準備ができるように「活動レベル」へのアプローチ
5) より有意義な生活を送るために,患者に寄り添い,ニーズを傾聴することは,他のアプローチと何ら変わらない
6) OTは,いつの時代も患者と挑戦し,患者から学ぶ姿勢に,全く変わりはない
と生活支援用具や住環境整備に対するアプローチをまとめました.
 今年度のセミナーでは,持続可能な社会を創るために,福祉用具分野においてOTがどのように貢献できるか考えていきたいと思います.まずは(1)セミナーの趣旨と効果検証の観点から松本が説明させていただき,(2)自助具作成の発想や技術伝承の観点から松元義彦氏,そして(3)商品化やアプリ開発など製品開発の立場から鴨下賢一氏,以上3名の専門OTの臨床経験を通して,「今まで大事にしていたこと」,「今後さらに大事になること」を話題提供していただき,『持続可能な社会を創るための福祉用具分野の作業療法』を整理していきたいと思います.